【社説】臨時国会閉幕 疑惑逃げ切り、許されぬ

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 臨時国会がきのう閉幕した。

 安倍晋三首相は夕刻の会見で、今国会の最大の成果として、承認手続きを終えた日米貿易協定を挙げた。

 「攻めるべきは攻め、守るべきものは守った」とアピールしたものの、何を攻めて何を守ったのか、協定の核心部分はあいまいなままだ。議論が十分に尽くされたとは言い難い。

 しかも会見では、首相主催の「桜を見る会」の私物化疑惑や、2閣僚が辞任した「政治とカネ」を巡る問題に、自ら進んで言及しなかった。今国会の論戦の大きなテーマだったにもかかわらずである。

 数々の疑惑は何一つ解明されていない。その責任は、圧倒的な数の力に守られ、誠実な説明から逃げ続けている首相自身にあるのは明らかだ。国会を閉じれば、幕引きが図れると思っているのだろうか。

 「桜を見る会」は、首相に直接降りかかっている疑惑である。公的行事の私物化批判に加え、預託商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」の元会長が招待され、顧客勧誘のための宣伝に使っていたことも発覚した。反社会的勢力が参加した疑いまで浮上している。

 野党が資料要求した当日に招待者名簿を廃棄した対応も不自然極まりない。バックアップデータが残っていた今年5月に、政府が「既に廃棄していた」と平然と答弁していたことも、信じ難い。疑念はむしろ深まるばかりである。

 安倍首相はこれまで「国会から求められれば説明するのが当然だ」と繰り返し述べてきた。それならば、野党の求めに応じ、堂々と衆参予算委員会に出席し、説明責任を果たすべきではないか。

 公選法違反疑惑で辞任した、菅原一秀前経済産業相と河井克行前法相(広島3区)の2人は、疑惑について「しっかり調査し、説明責任を果たす」と約束した。ところが、説明どころか国会にも出席しなかった。

 首相が「任命責任」を痛感すると言うのであれば、本人らに説明責任を果たすよう指導すべきではないか。「雲隠れ」を容認するのでは、責任放棄と批判されても仕方あるまい。

 日米貿易協定を巡っても、本質的な議論を尽くしたとは言い難い。衆院だけを見ても、審議は、2016年に審議した米国を含めた環太平洋連携協定(TPP)の2割程度しか時間をかけていない。

 日本から米国へ輸出される自動車や関連部品の関税撤廃の行方や、日本車への追加関税を発動しないことを示す根拠は、安倍首相とトランプ米大統領の「首脳間の約束」と繰り返すだけだった。

 国会が行政監視機能を発揮するには政府側の誠実な対応が欠かせない。まず資料を提出し、国民が納得いくまで議論を尽くすのが筋だろう。

 野党は40日間の会期延長を求めていたが、与党は結局応じなかった。審議すべき法案はおおむね成立したという理由だが、与党からは防戦を強いられている国会を一刻も早く閉じたいとの思惑が透ける。

 次の焦点は年明け開会の通常国会である。首相自身にも降りかかっている疑惑や疑念を放置したままでの「逃げ切り」は断じて許されない。