新テストのドタバタ

 〈…予見の困難な時代の中で新たな価値を創造していく力を育てることが必要です〉と力説する文部科学省自身が“予見の難しさ”の実例になってしまった。説得力抜群と言うべきか、なんてお粗末、と言うべきか▲「大学入学共通テスト」を巡るドタバタがひどい。何が必要なのか分からなくなった、大人の都合で振り回さないで…と切実な憤りの声が先週末の紙面にあった。新テストの「1期生」となる現在の高校2年生▲怒っているのは直接の当事者だけではあるまい。制度変更の直前には受験生が“安全志向”になる傾向があるらしい。混乱が、一つ上の学年の進路選択にも微妙な影響や動揺を与えているのは想像に難くない▲そもそも、知や学問の世界は広くて深いし、「勉強が一生続く」のは単なる比喩ではない。それなのに、大学入試が何かの到達点のように扱われ、受験生たちにとって一生の重大事であり続けていること自体、大問題だと思うが、それを論じるには行数が足りない▲ただ、はっきりしているのは、どんな形式を採ろうが、一度や二度のペーパーテストで測れることなど高が知れていることだ▲大学入試の方法を変えれば、この国の教育の何かが劇的に変わるはず-と考えること自体が大間違いなのだ、とそろそろ本気で気づきたい。(智)

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