首相、招待者へ「皆さんと共に政権奪還」と呼び掛け

検証・桜を見る会と夕食会(下)

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竹田昌弘

共同通信編集委員(憲法・司法・事件)

竹田昌弘

共同通信編集委員(憲法・司法・事件)

 1961年富山県生まれ。毎日新聞から共同通信の記者に転じ、宇都宮支局、社会部、大阪社会部に在籍。社会部次長、司法キャップなどを経て現職。共同通信社の「事件報道のガイドライン」や事業継続計画(BCP)の策定も担当した。

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臨時国会の閉幕を受けて記者会見する安倍晋三首相=12月9日、首相官邸

 臨時国会が9日、閉幕したことを受け、安倍晋三首相は記者会見し、公的行事「桜を見る会」の私物化問題については、従来の説明を繰り返した。招待者名簿は「適正に廃棄している」と述べたが、11日午前0時現在、今年の会の様子を撮影した動画や写真は首相官邸のホームページ(HP)にアップされたままだ。動画を見ると、首相は会の冒頭「(公明党代表の)山口(那津男)さんや皆さんと共に政権を奪還してから、7回目の桜を見る会となりました」とあいさつしていた。(下)では、桜を見る会への招待の在り方と夕食会の問題を検証する。(共同通信編集委員=竹田昌弘)

 ■園遊会と比較すると、私物化明らか

「桜を見る会」で招待客と握手を交わす安倍首相(中央)=4月13日、東京・新宿御苑

 首相が呼び掛けた「皆さん」は、会場の新宿御苑に集まった招待者であり、首相は一緒に政権を奪還した仲間と考えているようだ。「皆さんと共に」という言葉は、政府が国会で答弁してきた「首相が各界で功績、功労のあった人を招き、日頃の苦労を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事」の私物化をはっきり示しているのではないか。 

 また桜を見る会と、天皇・皇后両陛下が主催する園遊会を比較すると、私物化がより明らかになる。宮内庁のHPによると、園遊会は「天皇・皇后両陛下が毎年春と秋の2回、赤坂御苑に約2千人を招き、親しく話す会」で、招待者は衆参両院議長・副議長・議員、首相・大臣、最高裁長官・判事、その他の認証官(任免に天皇が公的に証明する認証が必要な官職)など立法・行政・司法各機関の要人、都道府県の知事・議会議長、市町村の長・議会議長、各界功績者とそれぞれの配偶者、皇族。春の園遊会には、各国外交官とその配偶者・令嬢も招く。 

春の園遊会で平昌冬季五輪で活躍した羽生結弦選手(手前右から4人目)らに言葉を掛ける天皇、皇后両陛下=2018年4月25日、東京・赤坂御苑

 一方、桜を見る会の開催要領によると、招待者は皇族・元皇族、各国大公使等、衆・参両院議長・副議長、最高裁長官、大臣・副大臣・政務官、国会議員、認証官、事務次官等・局長等の一部、都道府県の知事・議会議長等の一部、その他各界の代表者等で、園遊会と多くが重複する。ところが、招待者の人数は園遊会が約2千人なのに対し、今年の桜を見る会は約1万5千人に上ったという。 

 園遊会は招待者を公表する。名簿が報道機関に提供され、新聞に氏名と肩書が掲載されてきた。宮内庁によると、名簿の保存期間は30年。これに対し、桜を見る会の招待者は非公開で、名簿は「会の終了をもって使用目的を終えることに加え、全て保存すれば、個人情報を含んだ膨大な文書を適切に管理する必要が生じること等から、内閣府において保存期間1年未満の文書として、会の終了後、遅滞なく廃棄している」(12月2日の参院本会議での首相答弁)という。園遊会と桜を見る会は、招待者が重複しているのに、会の在り方が大きく異なっている。

■ 首相の説明に修正や矛盾

 首相は11月8日の参院予算員会で、桜を見る会について「私は主催者としてあいさつや招待者の接遇は行うが、招待者の取りまとめ等には関与していない」と答弁した。しかし、安倍晋三事務所が前日の夕食会とセットで、桜を見る会に地元支援者を招待していたことが案内状などで明らかになると、11月20日の参院本会議で「私の事務所が内閣官房から推薦依頼を受け、幅広く参加希望者を募ってきた。私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった」と答弁の軌道修正を余儀なくされた。その後、首相は招待者に関するそれ以上の情報を明らかにしていない。官邸のHPに残る動画(膨大な個人情報を含んでいる)に登場するのも、芸能人がほとんどだ。 

 首相は9日の会見で「私自身の責任において、招待基準の明確化や招待プロセスの透明化を検討するほか、予算や招待人数も含めて、全般的な見直しを、幅広く意見を聞きながら行ってまいります」と語る一方で「さまざまなご指摘を踏まえ、菅(義偉)官房長官が内閣府に確認させた結果(招待者名簿の)データの復元についても不可能であるとの報告を受けた」と述べた。招待者名簿がもはやこの世に存在しないのに、どうやって「招待基準の明確化」や「招待プロセスの透明化」を検討するのだろうか。言っていることが矛盾している。招待者の在り方や名簿の廃棄問題は今後も追及が続くとみられる。

 ■夕食会も説明裏付ける書類など示さず

 次は桜を見る会前日の4月12日夜、首相の地元支援者らを東京都千代田区のホテルニューオータニに集めて開かれた立食形式の夕食会。首相は11月20日の参院本会議で「あべ晋三後援会が主催した」と認め、それに先立つぶら下がり取材で、次のように説明している。ただ説明を裏付けるような書類などは、現在に至るまで全く示していない。 

 ①夕食会や旅費、宿泊費など全ての費用は参加者の自己負担で、安倍事務所や後援会には収入、支出は一切ない。 

 ②夕食会の費用は会場の入り口で、安倍事務所の職員が1人5千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手渡した。受け付け終了後、集金した現金でホテルに支払いをした。 

 ③夕食会の価格が安過ぎるのではないかとの指摘もあるが、大多数がホテルの宿泊者という事情を踏まえ、ホテル側が設定した価格という報告を受けている。 

 ④夕食会の出席者は約800人で、その大半が翌日の桜を見る会に出席した。 

「桜を見る会」前日の4月12日、ホテルニューオータニの宴会場で開かれた夕食会(出席者のケイ潤子さんのブログから)

 ニューオータニの広報担当者は夕食会について「個別の案件なので答えられない」としつつ「一般的には、入金と同時に領収書を渡す」と話す。②の説明のようにするには、ニューオータニから事前に領収書をもらっておかなければならないが、領収書は入金と同時という説明と食い違う。後援会が夕食会の前に費用を立て替え払いし、参加者の人数分の領収書をもらっていた場合、後援会には支出と収入が生じる。 

 ニューオータニのHPによると、宴会場での立食パーティーは1人1万1千円(宴会場使用料、税、サービス料など込み)からなので、夕食会は半額以下に値引きしたことになる。首相が③の説明をした後、2015年の夕食会はニューオータニだが、宿泊先はホテルオークラとANAインターコンチネンタルホテル東京だったことが明らかになった。しかし、首相は「5千円はホテルが設定した」「(夕食会の)明細書はない」と言い続けている。 

あべ晋三後援会主催の夕食会が開かれたホテルニューオータニ=12月10日

■ニューオータニ、公選法違反の共犯となる可能性も

 15年の宿泊先になった二つのホテルにそれぞれ取材すると、まずホテルオークラは、▽立食パーティーはおおむね1万5千円から、▽ディナーショーなどホテル主催のパーティーでは、ホテルの領収書を個人に渡すが、それ以外はパーティーの主催者に総額の領収書を発行し、ホテルの領収書を参加者にそれぞれ渡すことはまずない、▽パーティーの明細書や見積書は必ず発行する―と答えた。 

 ANAインターコンチネンタルホテル東京の回答は、▽立食パーティーの人数や内容によって、5千円でも可能、▽領収書は代金と引き替えに発行し、要望によって個人宛てにも発行するが、主催者の隣にホテルの従業員がいて、会費の5千円をもらうたびにホテルの領収書を発行することはあまり考えられない、▽パーティーの明細書や見積書は必ず発行する―だった。 

 パーティーの主催者が参加者から集金し、ホテルの領収書を渡したり、明細書や見積書が発行されなかったりすることは、少なくともこの二つのホテルではないようだ。元検事の弁護士は「ニューオータニと後援会側が事前に話し合い、地元有権者である参加者に5千円を上回る代金の飲食を供与していた場合、ニューオータニも公選法違反の共犯となる可能性もある」と話している。 

 明細書などの会計書類は法人税法で7年、会社法で10年の保存義務があり、ニューオータニには必ず保管されている。首相の説明が事実であれば、ニューオータニから会計書類を取り寄せて公開すれば、この問題が越年することはない。