ネット投票はどうしてできないの?そもそもネット投票導入で投票率はあがる? #選挙ドットコムちゃんねる 第4回

今回の選挙ドットコムちゃんねるのテーマは「ネット投票ってどうしてできないの?」です。

コンビニでの支払いはスマホでできて、役所への届けもネットで可能なものが多い現代に、どうして今も投票だけは自分の足で投票所に出向いて、紙の投票用紙に候補者の名前を鉛筆で書いて……というアナログなスタイルが取られているのか、不思議に思う人も少なくないのでは?

「投票率が低い」と社会問題化している原因のひとつが、この昔からの投票スタイルなのでは?

そこで現時点で、日本がネット投票や電子投票を採用していない、本当の理由を読み解いていきます。

選挙ドットコムちゃんねる第4回の番組を、ダイジェストでお伝えしていきましょう。

ネット調査では「ネット投票が実現したら、投票する回数がUPする」と答えた人が、63.0%

乙武 「ネット投票ね。若い人なんかは、やっぱりやりたがる人が多いですね」

松田 「そうですね。千葉ちゃんもネット投票はできたほうがいいと思う?」

千葉 「絶対、ネット投票のほうがいいと思っている派ですね」

松田 「それはパソコンから投票するイメージ? それともスマホから?」

千葉 「やっぱりスマホから簡単にできたほうがいいなって思います」

松田 「まぁ選挙ドットコムとかを見て『この人いいな』ってポチッと投票できたならねえ、楽な感じはしますよね。
候補者が一覧になってて公約も比較できますし」

千葉 「投票所って小学校の体育館とか使うじゃないですか。
あんまり行き慣れていない場所に地図を見ながら行くって、けっこう大変だなあって。
それならAKBの総選挙みたいにね……。IDとか入れてできないのかなと思うことはあります」

乙武 「実際に世論としてはどのくらいネット投票が期待されているのか、データがあるんですよね」

千葉 「そうなんです。ネット調査によるとたしかに待望論はあるんですよね。

これは選挙ドットリサーチが、ネットパネルのみで2019年11月9日から10日の間に実施した全国意識調査なのです。有効回答数は1000人。

『パソコンやスマホから、選挙の投票ができるようになったら、あなたが投票する回数は増えますか?』という問いに対しての答えです。

◇今よりは投票する…63.0%
◇どちらともいえない…29.2%
◇投票はしない…7.8%

となっています」

松田 「これはスマホユーザーに対する調査ですから、そらそうかっていう結果ではあるんですが」

乙武 「やっぱり多いね」

すでにネット投票を実施している国では、投票率があがっているわけではない

乙武 「ちなみに海外でネット投票を実現している国ってあるんですか?」

松田 「はい。エストニアという国がネット投票を導入していまして、2005年から投票の43.8%が利用(2019年3月時点)しているということになっていますね」

乙武 「へえ、けっこう昔からやっているんですか。もう14年前?」

松田 「非常に人口の少ない小さな国なんですが、いわゆる社会主義の態勢が崩壊してから独立した国ですので、いってみたら国民を管理するシステムというのが、導入をたやすくした要因だといわれているんです」

千葉 「2018年3月に行われたエストニア議会選挙では、56万票のうち、24万7千票がオフラインで投票されているんですね」

松田 「ただまあネット投票をしたから爆発的に投票率が上がったかというととくにそういうことでもないんですよ」

乙武 「え、そうなんだ? じゃあ今まで投票していた人のうち半分くらいネットで投票するようになったってことで、今まで投票していなかった人がネット投票で、投票をするようになったかというと、別問題なんですよね」

松田 「そうですね。そこがなぜかわからないと言われているんですけど、ひとつ確実に増えたと言われているのが、仕事などの関係で、一時的に国外に居住しているエストニア国籍をもってる方が、ネットを使って投票できるので、便利になったということ。

今、日本でも総務省、外務省が、在外投票ということで、ネット投票の試験導入を検討しているんです。
今、海外に住んでいる人が選挙に投票するのはすごく面倒くさいんですよ。
郵送で投票用紙を送ってもらって、また送り返すとか、すごく手間がかかるんで。

なので、在外投票をネットでできるというのは、日本でも数年以内に実現する可能性はあります」

乙武 「なるほど、これ私のような車いすユーザーも、ありがたいかもしれないですね。
投票所に行くのが大変、という意味では、高齢者の方も……。
まぁ高齢者でもみんなネットが自由に使えるっていうのは、もう少し待たないと無理かもしれないかもですが」

松田 「実際に投票率で見ますと、75歳以上の方は投票率が下がっているんですよね。

だいたい年代があがっていくにつれ、投票率も上がっていくんですが、その上昇が75歳がピークで、それ以降は下がっていくんです。

やっぱり足が悪いとか、施設に入ってしまって投票できなくなってくるという。

なのでご年配の方が、ネットを使って投票できるようになるのは、意味があるとは思いますね」

乙武 「先ほどエストニアという国が出てきましたけど、それ以外でどっかあるんですか?」

電子投票が普及しているアメリカも、ネット投票には足踏み気味?

松田 「国政の選挙で、導入している国はほかにないですね。
一部、 アメリカの州の選挙などで導入を検討する動きがありますが。

これはVortzというアプリを使ってスマホで使って投票して、セキュリティ面にはブロックチェーンを利用するという手法を使った安全な投票ということで、米国の地方選で試験実施されているんです。
いわゆる顔認証のシステムを使って投票すると。

安全が担保されているので、ハッキングの危険もないということで、このサービスを開発した会社が資金調達で成功して、いろいろ実験が進んでいるというところです」

乙武 「ハッキングの危険性がないって、断言できるんですか?」

松田 「いや、完璧にはできないですよね。
現段階ではハッキングに対して、非常に脆弱性が低いとされるアプリではあるんですが。

日本だとあんまりイメージできないんですけど、アメリカの場合は電子投票が普及しているんです。
これはネット投票とはまた違って、タッチパネルを押して投票する方法なんですけど、その結果を改ざんしようと思ったら、可能なんじゃないかと。

実は、ハッキングの大会で11歳の少年、少女が実際に大統領選の結果があるサーバーをハッキングして、結果を改ざんしたという実例がありまして」

乙武 「11歳が国家を転覆させることができる!!!?」

松田 「だから今のシステムが、非常に脆弱だということで話題になったんですけど、やはり電子投票についてはいろいろと課題がある。
その流れでネット投票も選挙結果に何者かが干渉してくるのではないかということで、アメリカでは今とても危惧されているんですね」

千葉 「そのつながりなんですけど、日本でも電子投票の検討や試験導入は、始まってはいるんですよね」

松田 「そうですね、つくば市とか。少しは」

千葉 「でもなかなかそれが進まないという原因に、この2003年7月の、岐阜県可児市で行われた市議選の事例があるんです。

電子投票を実施したものの、サーバーの不具合で1時間以上投票できない状況が続き、やっと復旧したかと思ったら、誤操作によって投票総数が投票者数を上回ってしまったというものです。

その後住民訴訟に発展して、選挙の無効が確定し、再選挙になってしまったんですね。
これ以降、電子投票の機運が萎んでしまったと言われています。

この件は、前回松田さんもご紹介くださいましたね」

乙武 「大変だよね、再選挙となればコストもかかるし」

松田 「そうですね。電子投票のメリットは、疑問票が出なくなること。
紙に自分で書く場合、誰のことをいってるのかわからない、という票が出てくるわけです。

そういう疑問票の判定は、開票作業の中で非常に時間がかかる原因のひとつだから、疑問票が
でない電子投票を採用すると、開票作業は非常にスピードアップする、と導入されたんです。

ところが電子投票導入の最初の段階で、これがあって大コケしてしまった」

乙武 「これがトラウマになっちゃったんだね。まあなるよねえ」

松田 「全国の選管にとっては、まさにトラウマ。電子投票なんて、こわくてできないと」

乙武 「でも16年も前の技術なわけでしょ? 今の最新の技術なら、行けるんじゃないの?って思っちゃうけど」

松田 「今なら技術的には全然、大丈夫だと思いますよ。
ただ、その間にアメリカの大統領選であったように、パネルで入れたものが改ざん、不正がないかどうかわからないという騒ぎなども起こって。

紙の投票のいいところは後で集計しなおせるってところなんですね、最悪の場合。
たとえば1票差で当落が決まったような場合だと、落選側が申し立てをすると、数え直すことができる。これは現物の投票用紙があってこそですよね。

でもパネルでやったら、それは無理。
コンピューターで集計した結果がハッキングされていじられるかもしれないっていうことがあるので、電子投票がなかなか日本で普及することはないんじゃないですかね。

ところで乙武さんはネット投票についてはどのように考えますか?」

乙武氏がこの1年でネット投票推進派から、懐疑派に転向したワケ

乙武 「僕、去年くらいまでは、ネット投票推進派だったんですよね。ところが『待てよ?』と。
『これ、ネット投票が可能になると、なるほどそういう党が票を伸ばしてくるわけね?』
と思ってからは、いややんなくていいんじゃないかなって思ってきましたね」

松田 「実際、千葉さんが言ってたみたいに投票棄権の理由を『忙しいから』という人は多いんですよ。ただその一方で、入れたい人がいないから、という場合もあります。

ネットで投票したら爆発的に投票率があがるかどうかはわからないんですけど、僕は今のところネット投票には慎重なスタンス。
スマホでどこからでも投票できちゃうというのは、危険なんじゃないかなと思うんですよ。
その理由は2つ。

ひとつめは、投票の秘密の保持が担保できないのではないかという点です。
選挙の投票において、だれにいれたかほかの人にはわからない、自分の意思で投票できるというのはすごく大事なことなんですね。

これがもし、独裁国家でやったら、表向きは選挙の形をとっていても、絶対その独裁側の名前を書かないと殺されちゃうわけじゃないですか。

でも日本はだれに投票しても、その秘密は保持されるわけです。
でもスマホ投票がOKになっちゃうと、大ぜいに囲まれて『じゃ今ここで○○さんに入れてよ』って強制されてしまうかもしれない。

エストニアもその危険性はわかっているので、期日前投票ではネット投票ができるけど、その後、何度でも誰にいれるか変えられるシステムになっています。
人前で強制されたりして投票したとしても、家に帰ってもう1度投票をやり直せるんですね。

そして投票日当日は、ネット投票はできない仕組みになっているので、投票所で実際に投票すれば、事前にネット投票していても投票所での内容が有効になる、とかね。

そういう対策は一応とられているわけですが、秘密保持の点ではやはりどうかなと。

もうひとつは、深く考えないで投票してしまうんじゃないかな、という点です。
脳科学者の池谷さんという方は、海馬についてとか、いろいろ書かれているんですけど、その方が言うには、人間はいまいる環境に左右されやすいと。

家の中でTV見ながらなんとなくスマホで投票するのと、わざわざ投票所まで行って、あの静かな独特の雰囲気、衆人環視の中で投票するというのでは、結果がかわってくるっていうんです。

数年に1度とかね、そういう機会に政治のことを真剣に考える機会というのは貴重だと思うんですよね。投票所にいった若い人が『すごく緊張した』なんて、選挙ドットコムの投票率向上のキャンペーンなどで意見を寄せていましたけど、僕はそういうのはとてもいいことなんじゃないかと思っていて。政治のことを考えるときは、少々儀式的ではありますけど、投票所に足を運んで誰に入れるかを真剣に考えてね、投票という行為を行うというのが、いいことなんじゃないかなあと今は思ってます」

乙武 「究極的な言い方をするとさ、投票率が上がることは、一般的にはいいことだと肯定的に捉えることができるけど、1ミリも政治に興味・関心のない人が『ど・れ・に・しようかな~』くらいのレベルで入れる人が増えて、投票率があがることも歓迎すべきかどうか?ってことですよね」

松田 「そうですね。なんとなく投票率が上がるほうがいいんじゃないかっていうのは確かにあるんだけど、選挙をどう考えるかですよね。
投票できることを権利と考えるか、義務と考えるかという。
やっぱり若い千葉さんからすると、まぁ投票所にいくのは面倒かもしれないけどさ、どんな投票システムにしていくべきだと思う?」

千葉 「おふたりのお話を聞くまではネット投票がいいって思っていましたけど、ネット投票が普及しないのはしないなりの理由があるんだなってわかってきました。

ただ今はマイナンバーもありますし、ネット選挙も今まで通りの紙の選挙もどっちも選べる、選択肢が増えるのは悪いことじゃないのかなっていうのも感じます。

先ほど、ネット投票を導入した国の投票率はあんまりかわらなかったという話がありましたけど、それはネット投票を導入するとき、投票率を上げていくような政策をプラスアルファでやってないからでは?と思うんですね。

あと、ネット投票が広がるような、なにかポジティブなメリットがあるといいなあと思いますね。
この前だと投票に行った人は、タピオカが安くなるとか、あったじゃないですか。
ああいうのがもっと広がれば、もっと前向きに投票所に行くんじゃないかな、って」

乙武 「逆にさ、投票に〇回行かなかったら、税率が上がるとか……」

松田 「乙武さんは罰則的なものを設けるという案で、千葉さんは短期的なインセンティブを与えることで、投票率を上げるっていう案ですね。
どちらも投票率を上げるには、一定の効果はあると言われています。

例えば、オーストラリアでは投票に行かないと罰金があって、オーストラリアでの国政選挙の投票率は95%超えているんじゃなかったかな。
非常に高いんですよ。これはもう『投票は国民の義務』っていう考え方ですよね。

日本はどちらかというと『投票は国民の権利』というとらえ方。
なので投票する権利もあるけど、あえて投票しない自由もあると。

実際、投票率は上がるほうがいいのか、あがるなら何%を目指すべきなのかっていうのは、難し所ですね。
仮に、投票率が1%でも、選挙は有効なんですよ、日本では。

このへんはね、どういう風に考えて行けばいいかってことは、もっと議論が盛り上がっていくといいですね」

ぶっちゃけトークを展開してくれる地方議員さん、大募集!

熱く語る松田さんの後ろで、なぜか背景がはがれるというハプニングが発生。
かけだしYouTube番組の選挙ドットコムちゃんねるは、日々、精進が必要です。。。

このような状況で、アシスタントの千葉さんは、堂々とコメント。

千葉 「まあ、こんな日もあるっていうことでですね。これからも選挙ドットコムちゃんねるをよろしくお願いします(にっこり)」

毒舌MCの乙武さん、政治を語らせるとついつい熱くなる松田さんを今後仕切っていくのは、肝の座った20代の美女、千葉ちゃんかもしれません。

千葉 「ところで選挙ドットコムちゃんねるに、メールが届きまして。
地方議員の方から、ぜひ番組に出演して語りたいというご連絡だったんです。
ありがとうございます!

そこで今後の企画のために、以下の条件で地方議員の皆さんのご出演を大募集します!

地方議員のリアルを伝えたい!

お金・恋愛・家族などのテーマで出演できる地方議員さん、大募集!

千葉 「たくさんのご応募お待ちしています!」

乙武 「アメトーク的な……」

松田 「オツトーク。おもしろそうですね。ぜひやってほしい。
地方議員の方が普段どうしているかって全然わからないですし、政治家っていうとなんだかすごく遠い存在に思えますけど、僕と同世代のけっこう若い地方議員とたくさんつきあいがありますが、みんなと同じ普通の人ばっかりなんですよ。

だから家族や恋愛、お金のことなどでみんな悩みながら、一生懸命仕事をしているので、そのリアルな感じがね、伝わるといいかなと」

乙武 「ぜひやりたい。地方議員の皆さん、応募してくださいね!」

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