「有権者」が驚異の増加!?12月12日投票 イギリス総選挙はどう変わる?

12月12日に投票日を迎えるイギリス総選挙では、11月26日に有権者登録が締め切られました。ジョンソン首相が解散総選挙を議会に上程し始めた9月4日から数え始めて11月26日までに有権者登録を行った人は約575万人(5,747,467人)。前回総選挙(2017年)での登録有権者数が約4700万人(46,835,433人)でしたので、単純に計算すると今回の総選挙では前回に比べて10%を超える規模で投票する権利を持つ人が増加したことになります。

選挙の実施が決まってから有権者登録をした人が前回総選挙から倍増

イギリスでは、年齢や国籍などの要件を満たしたうえで、所定の手続き(有権者登録)を経た人だけが選挙権を得ることができます。

イギリスでは若者の投票率が上昇傾向?!EU離脱問題に揺れる英国総選挙の行方はいかに>>

EUからの離脱をめぐる国民投票の後に行われた前回の総選挙での登録有権者の増加数(メイ首相・当時が解散総選挙を明言した4月18日から登録締め切り日の5月22日までの集計)は約294万人でしたので、今回の登録有権者の増加数がいかに大きなものであるのかがわかります。

記録的な有権者登録の実施状況

今回の総選挙における有権者登録をめぐる状況については注目したいことが2つあります。

1つ目は1日当たりの有権者登録数の記録を更新したことです。
前回総選挙での登録締め切り日であった5月26日に約62万人の登録がなされたことが、これまでの1日当たりの有権者登録数の最多記録でしたが、今回の登録締め切り日である11月26日には約66万人の登録が行われ、記録更新となりました。
ちなみに、2018年のイギリスの人口が6,644万人ですので、たった1日で国民の1%に相当する有権者が誕生したことになります。

図表1_年代別有権者登録サービスの利用者数

2つ目は若者の登録有権者数の増加です。
イギリスは日本とは違って18歳になっただけでは選挙権を得ることができません。図表2にあるように、10代や20代前半の国民の1/3は有権者登録をしていない状況にあり、若者の登録率の低さが課題となってきました。

図表2_年代別有権者登録実施者数の割合

今回、18歳から24歳までの年齢で有権者登録を行った人は約198万人でした。これは18歳から24歳までの人口約571万人のうち34.7%を占めています。また、前回、同年齢層で有権者登録を行った人数105万人と比較してもその人数の多さが際立ちます。

イギリスの有権者登録制度では、実家と進学先が離れている場合などにそれぞれの場所で有権者登録をすることが可能となっています。そのため、今回有権者登録をした人の中には、すでに実家で登録をしているものの、新たに進学先で登録した人などが一定数含まれていることも見込まれますが、その影響を考慮したとしても多くの若い世代の有権者がこれまでと違って選挙に参加しようとしていることがわかります。

若者世代の登録有権者数の記録的増加は香港でも

先日、世界中の注目を集める中で区議会選挙が行われた香港でも、若い世代の登録有権者数が大幅に増加しています。

図表3_香港での年代別登録有権者数

図表3では、2015年の区議会選挙での年齢別登録有権者数と2019年の年齢別選挙人名簿登録者数を比較しています。18歳から25歳までの登録有権者数は11.1万人(2015年)→38.4万人(2019年)と約3.5倍に増加しています。同様に、26歳から35歳までの登録有権者数も15.8万人(2015年)→61.1万人(2019年)と約3.9倍になっています。

全年代での増加率は2.8倍でしたので、若い世代ほど積極的に有権者登録を行ったことがわかります。

イギリスでも若者が政治の主役になるか?

EUからの離脱問題で揺れるイギリス、中国との関係で揺れる香港と、国のかたちが問われる場面では若者の投票参加も促進されていることがわかります。

ここ数年のEU離脱をめぐる議論はイギリスの有権者の意識を大きく変化させました。
例えば、イギリスの世論調査会社の調査にも有権者の関心の変化が表れています。同社の調査によると、2015年の総選挙において有権者が関心を示していたのは国民保健サービスや移民問題であり、EU離脱問題に関心を示す人はほとんどいませんでした。ところが、2017年の総選挙ではEU離脱問題が国民健康保険サービスと並ぶほどの強い関心を集めるようになり、今回の総選挙ではEU離脱問題がほかのテーマに比べて圧倒的な関心事となっています。

EU離脱問題をめぐっては、国民投票の結果が出た後にEU残留派が多いと言われている若者世代が投票に行かなかったことを悔いるコメントをしている様子が報じられることもしばしばありました。そして、今回、多くの若者が新たに有権者登録を行っています。

香港では若者の行動が選挙結果に大きな影響を与えましたが、イギリスではどうなるのでしょうか。
12日の投票結果が注目されます。

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