社説(12/11):読解力の急落/読書習慣の定着を図りたい

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 経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに15歳を対象に実施している学習到達度調査(PISA)の2018年調査の結果が発表された。それによると、日本の高校1年生の読解力は、前回の8位から15位に急落した。

 順位だけに一喜一憂し、過剰に反応する必要はないだろう。PISAの在り方に対して疑問を呈する専門家は以前から多く、また、順位を上げるため優秀な子だけを受験させる国があるとされ、信頼性に疑念が残るからだ。

 とはいえ心配なのは、文章の読解力の低下が前回の調査結果に続く長期的な傾向であることだ。今回の結果は、わが国の教育現場の実感などとも一致している。

 文部科学省は原因を詳細に分析し、効果的な対策にできるだけ早く乗り出すべきだろう。国語の正確な理解は、全ての教科を学習する基礎となるからだ。その意味では今回の結果に正面から向き合わなければなるまい。

 調査は読解力のほか、科学的応用力、数学的応用力に関して行われ、日本からは無作為抽出で国公私立183校の約6100人が参加した。科学的応用力と数学的応用力はトップ集団に入っている。従って、全体的に学力が低下したわけでは全くない。

 読解力の低下の原因は、前回から導入されたパソコンを使ったテストに生徒が不慣れな現状が指摘されている。それが原因なら改善は容易なはずだが、問題はもっと根深いのではないか。憂慮されるのは、子どもたちが活字に親しむ時間の減少だ。

 小説や物語などのフィクションを月に数回以上読む生徒の読解力は、そうでない生徒よりもかなり高かった。新聞や漫画をよく読む生徒も同様に高得点だ。注目すべきなのは、このような傾向がフィンランドやオランダなど外国でも同じだったことだ。

 文科省は来年度以降、小学校から順次実施する新しい学習指導要領で、小学校では言語能力の育成を新たに掲げている。高校では論理的な文章を読み書きする力を養う「論理国語」を新設するなど、読解力の向上に取り組む。

 こうした教科内容の改善に加えて、家庭での生活習慣の改善も必要だろう。「スマートフォンによる友人との短文のやり取りが広がり、長い文章を論理的に正しく読み取る力が落ちている」という専門家の指摘は説得力がある。

 今回の調査では、月に数回以上雑誌を読む生徒が前回より33.8ポイント減の30.8%、新聞は36.0ポイント減の21.5%に急減した現状が明らかになっている。活字に親しむ時間の減少と読解力の低下は、密接な関係がある。

 迂遠なようだが、幼年期から読書習慣の定着を図るのが効果的な方策だろう。ネットに真偽不明の情報があふれる中で真実を見抜く読解力の養成は重要度を増している。