危険な投資とは?大切なお金を知らない人へ預けられるか

この数ヵ月、金融教育をテーマに議論する機会が増えていますが、日本で金融教育というと「投資教育」と「消費者教育」のどちらかに比重が偏る傾向にあります。前者は投資のための教育、後者は主に詐欺被害などにあわないための教育を指します。消費者教育の議論をしていると、危険な投資の話が出てくることも。しかし、筆者は投資自体を危険とすることについてはしばしば異論を唱えることもあります。今回は「本当に危険な投資は何か」について書いていきます。


それは本当に危険なのか?

最近、大学生の間で投資をテーマにした詐欺が流行っています。「必ず儲かる方法を教える」、または「このUSBメモリーを買えば必ず儲かる」と言って、金銭を払わせる手法です。その際に使われる投資の種類は「仮想通貨(ビットコイン)」や「FX(外国為替証拠金取引)」、「日経先物取引」、「バイナリーオプション」などです。

その結果、消費者教育で、これらの投資自体が危険と大学生に伝えている人もいるのですが、筆者はそれは間違いだと考えています。そもそも、これらの投資は決して違法行為でもなく、資産を増やすことも可能な投資です。問題なのは、仕組みを理解しないまま投資することでしょう。

「日本円などの法定通貨とビットコインなどの仮想通貨って何が違うの?」や、「バイナリーオプションってどういう仕組みなの?」と聞いて、正確に回答できる学生は多くありません。しかし、そういう学生たちがお金を増やしたいとこれらの投資に興味を持っています。このギャップこそが危険の正体なのです。

知らないものに投資することが危険

「知らないものに投資すること」がどれだけ危険なのか。一般的な日本株投資を例にしてみましょう。既に株式投資をしている人は一緒に考えてみてください。

これまで投資をした、または現在投資をしている企業の事業内容は知っていますか?もし何をしているか知らないのに、企業の株に投資をしているのだとしたら、それは非常に危険な行為です。

何をしている企業かは知っているという人も、十分ではありません。その企業がどのようにして売上をたてているのか、属している産業がどんな状況にあるのか、競合他社はどこか、といったような情報も知っておく必要があります。

お金は非常に大切なものです。あまり理解していない企業の株に投資をするのは、大切なお金を知らない人に預けることと同義です。投資先の企業を調べるのは面倒なことかもしれませんが、その手間を惜しむのであれば、投資はしない方がいいかもしれません。それほど、知らないものに投資することは危険なのです。

投資と投機の違いを理解する

このような話を学生にする時は、「投資」と「投機」の違いについて議論をします。前述の「しっかり理解しているかどうか」も投資と投機の違いの1つかもしれませんが、それ以外にもいくつかの観点があります。

まずは「期間」が挙げられます。明日儲けよう、数時間後には倍になるかもしれない、こういった視点でお金を使うことは投機だと考えます。一方で投資であれば、やはり10年、20年といった長い目線で考え、複利を活用して資産を増やす観点を持たないといけません。

つぎに挙げられるのは「リスク」の考え方です。日本では一般的に「リスク」という言葉は「危険」の意味で使われがちですが、正確にはリターンの変動幅を指します。つまり、リスクが高いというのは単純に損をする可能性が高いわけではなく、大きく儲かることもあれば、大きく損する可能性もあるということです。リスクを大きく取ることは投機であり、リスクを抑えて一定の水準にコントロールすることが投資になります。

何がその投資の目的なのか

少し難しい内容かもしれませんが、投資をする目的が何なのかを考えることが最も簡単で重要です。

これから投資をするとして、目的が老後資産の形成や子どもの将来の学費だとしましょう。本当にそのお金を投資しようと思いますか? その時に自信をもってイエスと答えられないのであれば、それは投資ではなく投機なのかもしれません。

これから投資をしようと考えている人に対して、頭ごなしに「危険だ」とか、「それは投機だ」と指摘するのはよくないかもしれませんが、せめて自分には問いかけをしてみて欲しいのです。

最近、大学生と話していると、明らかに詐欺である投資案件に接触している人が想像以上に多いことに驚きます。親元を離れた一人暮らしで、相談相手がいなかったり、クレジットカードを作れるようになったり、お金を借りられるようになるため、詐欺への防御力が必要になるタイミングでもあります。


本当に危険な投資とは何か、いまいちど自分自身に問いかけながら意思決定をしていきましょう。

© 株式会社マネーフォワード