こんな風に私がいうのもおこがましい（本当に）のだけれど、なんて安定して素晴らしいテンポのパフォーマンスなのだろう。駆け抜けるような危うさとか、観ているこちらまでヒリヒリする緊張感に包まれた表現も魅力の一つだと思うけれど、なんというか本作には穏やかな愛、が満ちているように感じた。
2017年、デビュー35周年を迎えた安全地帯。このアニバーサリーイヤーに行われたツアー「ALL TIME BEST『35』～35th Anniversary Tour 2017～」から、日本武道館での公演を完全収録した本作。22曲に2曲のアンコールを加えたパフォーマンスに加え、公演直後からの舞台裏や、メンバーからのインタビューを収めた特典ドキュメンタリー映像も見逃せない。
きっと、身体のなかいっぱいに音楽が詰まっている人なんだろうな……本作全体から、そんなことを思った。時にはその音の洪水に溺れそうになることもあるかもしれない、でもこうして、あふれる音の波を乗りこなして奇跡を見せてくれる、その尊さ。才能、という重さを超えて、私たちに人の存在の尊さを信じさせてくれるようだ。
（日本コロムビア・7000円＋税）＝玉木美企子
