越冬したか

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 紙袋を渡されていた時代の一句がある。〈懐にボーナスありて談笑す〉日野草城。胸の内ポケットをお札で膨らませ、笑い声も弾んだのだろう▲手渡しはほとんど昔話になり、懐の温かさをじかには感じにくいが、そわそわと支給の日を待つのは今昔、変わりない。冬のボーナスの季節になった。官民ともにきのう支給されたところが多い▲国会議員にも出され、その人たちも受けたはずだが、どんな心地でいるだろう。政治とカネの問題で辞任した現政権の前閣僚、菅原一秀氏と河井克行氏はもう1カ月以上も国会に姿を見せず、雲隠れを続けてきた▲辞任の際、事の次第を「調査する」と言ったが、すぐさま姿をくらますのでは、逃げ口上だったと言うほかない。今は「逃げ切った」と安堵(あんど)の胸をなで下ろしている頃か、追及の場である国会は、閉会した▲言うまでもなく、閣僚を辞めても議員の地位を失うわけではなく、職責もうせたりしない。語るべき口をふさぎ、時が過ぎるのをただ待つのであれば、議員の職を自ら投げ出すのと同じだろう▲歳時記を開くと、冬の季語「年末賞与」に「越冬資金と呼ばれた時代もある」という説明があった。国会は閉じ、年末の“資金”も得て、元閣僚のお二人が越冬した気でいたとしても、国民の視線はきっと凍るように冷たい。(徹)