「小中一貫」効果を疑問視 統合計画の二宮町で専門家講演

小中一貫教育による学校統廃合の影響などについて説明する山本教授=二宮町町民センター

 神奈川県二宮町教育委員会が町立小中学校5校を小中一貫学校2校に統合する計画を巡り、小中一貫教育の問題点について考える講演会が8日、同町内で行われた。町教委が強調する一貫教育の効果について、専門家は「科学的根拠はない」とした上で「児童の自己肯定感が低くなる傾向がある」と指摘、教育上の効果を疑問視した。小中学校の統廃合には、「学校がなくなった地域のコミュニティーは一瞬で失われる」と警鐘を鳴らした。

 小中一貫教育によるメリットやデメリットについて理解を深めようと、教育関係者ら町民有志による実行委員会が主催した。学校統廃合の問題に詳しい和光大学の山本由美教授の解説に、約40人が耳を傾けた。

 小中一貫学校のうち校長を1人のみ置く義務教育学校は、2015年の学校教育法改正により制度化。18年度で全国82校(県内2校)が設置されるが、二宮町と同様に人口減に苦しむ地方で“縦の統廃合”に踏み切る例が多いという。

 茨城県内では計9校の小中学校が1校に統合され、広大な通学圏を20台のスクールバスでカバーするケースも。国の財政誘導もあり、山本教授は「小中一貫教育が学校再配置の口実になっている」と指摘する。

 町教委は進学時にいじめや不登校が増える「中1ギャップ」の解消を一貫教育の目的に挙げるが、山本教授は「中1の不登校などの問題は小学校高学年から潜在化していたもの。中1ギャップに科学的根拠はない」と疑問視した。

 一方、山本教授は、自身も参加した研究グループが13年に全国の一貫校と一般校の子ども計約9千人に実施したアンケート結果も報告。一貫校の小学4~6年生は一般校の児童より「自分自身の能力への自信」が低かったが、中学3年になると両者の差は解消されたという。

 原因として、小学校では高学年の児童がリーダーシップを発揮することで自らの自信につながるが、中学生もいる一貫校では活躍の場がないとした。山本教授は「小学校高学年は自分に夢を見る時期。成長するにつれ現実を知るが、この時期に築かれた自信がベースとなる。最初からネガティブなのは、成長する上で問題」と強調した。

 町教委が1学年1クラスの単級化の解消を統廃合の理由に挙げていることに対しても、「学校規模と教育的効果に相関関係はない」と指摘。一貫校では小中の教員が連携するメリットもあるとしながらも、「学校の存在は地域コミュニティーで何よりも大事。単純に学校の規模だけで統廃合を判断してはいけない」と警告した。

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