超貴重な吹替版! デ・ニーロ=池田勝、C・グローデン=羽佐間道夫 の掛け合いが光る『ミッドナイト・ラン』

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『ミッドナイト・ラン』DVD:1,429 円+税/ Blu-ray:4,200 円+税発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント※2019年11月の情報です。

『ミッドナイト・ラン』(1988年)は、保釈金ローン会社に雇われた賞金稼ぎが、マフィアの資金を盗んで追われる公認会計士を連れて、ニューヨークからロサンゼルスまでアメリカを横断するロードムービー。設定はアクション映画だが、強面の元刑事と心の優しい会計士が反目しながら次第に打ち解けていく、二人の漫才のような掛け合いが楽しいバディ・ムービーの傑作だ。

名吹替と言われる1992年テレビ朝日「日曜洋画劇場」初放映版だが、15分ほどカットされていたシーンには吹替音声が存在していなかった。しかし2018年にCS映画専門チャンネル ムービープラスが新たに追加収録し、待望の本編ノーカット版が完成、このたび同局で放送される。

※ムービープラス初回放送後にBlu-ray収録された。

『ミッドナイト・ラン』© 1988 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ビバリーヒルズ・コップ』『セント・オブ・ウーマン』の監督が放つバディ・ムービーの傑作

ジャック・ウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ/声:池田勝)は、保釈金ローン会社の社長エディ(ジョー・パントリアーノ)との契約で、逃亡した被告人を公判までに連れ戻し、その賞金稼ぎで暮らしているシカゴの元刑事。ジョナサン・マデューカス(チャールズ・グローディン/声:羽佐間道夫)は、ラスベガスのマフィア、ジミー・セラノ(デニス・ファリナ)の金1500万ドルを横領し、慈善事業に寄付した心優しい会計士。だが、横領罪で逮捕され、エディから借りた金で保釈された後、姿をくらましていた。

マデューカスを捜しだし、5日以内にロサンゼルスに連れていく仕事を破格の賞金で引き受けたウォルシュの前に、FBIのモーズリー捜査官(ヤフェット・コットー)が現れ、セラノ逮捕のためにマデューカスを引き渡すよう要請するも、あっさり断る。元刑事のツテで、逮捕記録からニューヨークでまんまと逮捕に成功したウォルシュだったが、飛行機恐怖症で機内で暴れ出したマデューカスのおかげで飛行機を降ろされてしまう。こうしてウォルシュとマデューカスは、FBI、マフィアの殺し屋、賞金稼ぎのライバルに追われつつ、鉄道、バス、パトカーを乗り継いで、ロサンゼルスに向かうはめになる……。

『ミッドナイト・ラン』© 1988 Universal Studios. All Rights Reserved.

監督のマーティン・ブレストは1951年ニューヨーク生まれ。彼を有名にしたのは、何といってもエディ・マーフィ主演『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)の大ヒット。スタンダップ・コメディアンだったマーフィを一枚看板で稼げる大スターにしたのがブレストだ。それに続くこの『ミッドナイト・ラン』と、アカデミー賞4部門にノミネートし、アル・パチーノが主演男優賞を受賞した次作『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992年)までがブレストにとっての最盛期。もともと寡作だったが、当時婚約中だったベン・アフレックとジェニファー・ロペスを主演にしたロマンチックコメディ『ジーリ』(2003年)が製作中から大混乱で、紆余曲折を経て公開された映画も大不評。その後、今にいたるまで新作がない。

ロバート・デ・ニーロの肩の力を抜いたフレッシュな演技が楽しめる

『ミッドナイト・ラン』は、ロバート・デ・ニーロがマーティン・スコセッシの『レイジング・ブル』(1980年)でアカデミー主演男優賞を獲り、ブライアン・デ・パルマの『アンタッチャブル』(1987年)でアル・カポネを毒々しく演じた直後の主演作。肩の力を抜いた楽しいデ・ニーロの演技がフレッシュで、それも評判になった。

対するチャールズ・グローディンは1935年ピッツバーグ生まれで、デ・ニーロより8歳年上。リー・ストラスバーグに師事して演技を学んだ俳優で、脚本家・演出家でもある。コメディアンとしての才能が認められ、大きくステップアップするきっかけになったのが『ミッドナイト・ラン』のマデューカス役だった。他に、テレビのトークショー番組のホストや、CBSのニュース番組「60ミニッツII」のコメンテーターでも知られる才人である。

名優と個性派脇役陣の丁々発止とした“掛け合い”と“間”の絶妙なバランス

脇を芸達者な個性派俳優で固めたのも本作の見どころ。強面のFBI捜査官モーズリーを演じたヤフェット・コットーは、『007/死ぬのは奴らだ』(1973年)で悪役のDr.カナンガを演じて注目された人で、映画ファン的には『エイリアン』(1979年)の乗組員パーカー役の方が有名かもしれない。マフィアのボスを演じたデニス・ファリナは数々の映画でギャングを演じた人だが、実はシカゴの元警官出身。マイケル・マンの『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』(1981年)でテクニカル・アドバイザーに雇われ、ついでに小さな役で出演したのがきっかけで俳優に転身した(残念ながら2013年に69歳で亡くなった)。マーヴィン役のジョン・アシュトンは、もちろん『ビバリーヒルズ・コップ』のタガート刑事で人気者になった人。今も舞台を中心に、TV・映画で活躍中だ。

『ミッドナイト・ラン』の楽しさは、彼ら芸達者たちの演技とマーティン・ブレストの演出が醸し出す、“丁々発止とした掛け合い”と“間”の絶妙なバランスにある。こういう作品は、やはり芸達者な声優による“声の競演”で見るのが一番だ。池田勝・羽佐間道夫コンビによる貴重なノーカット版『ミッドナイト・ラン【地上波吹替追録版】』放映をお見逃しなく。

文:齋藤敦子

『ミッドナイト・ラン【地上波吹替追録版】』はCS専門映画チャンネル ムービープラスで2019年12月放送