12月某日、元アトレティコマドリードの下部組織所属で、過去に当メディアで インタビューを行った宮川類氏にインタビューを行った。スペインへの再挑戦と帰国の経緯、今後のビジョンに迫る!
以前のインタビュー記事は→https://www.golaco.club/articles/5027
11歳で名門、アトレティコ・マドリードの下部組織に入団!
アトレティコ時代の宮川氏:本人より提供
以前のインタビュー記事は→https://www.golaco.club/articles/5027
辻本:インタビューは1年半近く前になりますね。本日はよろしくお願い致します。
宮川氏:よろしくお願いします。
辻本:まずは改めてサッカーを始められたきっかけを教えてください。
宮川氏:僕は山梨出身で地元のトラベッソというチームの監督を親戚がやっていました。そのこともあり、トラベッソで3歳からサッカーを始めました。
辻本:トラベッソからアトレティコに・マドリードの下部組織に入団したきっかけを教えてください。
宮川氏:当時は、1ヶ月間「海外のサッカーを経験したい」という思いがあり、毎年アトレティコが開催しているサマーキャンプに参加しました。世界各国から約300人の選手が集まっていました。そこで3人だけスカウトされて下部組織に入団できたのですが、その1人に選ばれました。
辻本:そこから中学3年生まで約4年間、アトレティコでプレーされて、レベルやサッカーに対する姿勢はどうでしたか?
宮川氏:そもそもサッカーに対する考えが全然違いました。スペインの指導者の指導の仕方も
日本とは全く違いましたね。
辻本:その後、日本に帰国して千葉の流通経済大柏に進学されますね。。スペインサッカーと日本の高校サッカーは全然違うと思いますが、適応するのに苦労はしましたか?
宮川氏:そうですね。先ほど話したように指導方法も違うし、スペインでは1時間半しか練習しないのに対して、日本は数時間練習したりします。走りのメニューも多いですし、そういった面でのカルチャーショックは感じましたね。
辻本:高校でもAチームでプレーされていましたが、日本の高校サッカーのレベルはどうでしたか?
宮川氏:レベルは決して低くないと思います。ただ、スペインでは練習での効率の良さや効率良く点を取るチームが多いです。日本は走り勝つような風潮があるので、そこは違いますね。
辻本:その後、慶應義塾大学でサッカーを続けられますが、高校サッカーや大学サッカーとの違いは感じましたか?
宮川氏:基本的にはそこまで変わらなかったですね。練習メニューや指導法も同じようなものが多かったです。レベルはどちらも高かったです。ただ、流経の本田監督はドイツやスペインにサッカーを学びに行っていたこともあって、流経のほうが海外のサッカーに近い部分はありましたね。
大学を休学して再びスペインへ!再挑戦の理由とは?
スペインのクラブに入団した宮川氏:本人より提供
辻本:ここからはスペインへの再挑戦の話を伺います。大学を休学してスペインに再挑戦を決断された理由を教えてください。
宮川氏:アトレティコに幼少期にいたこともあり、スペインでサッカー人生を終えたいと思いました。
辻本:スペインでどのくらいのレベルを目標にしていましたか?
宮川氏:プロを目指していきました。そのため、スペインの3部相当のクラブのトライアウトを受けたりしていました。結果的に4部のチームに合格しました。そこは給料も出るのでセミプロという形でした。私はワーキングホリデービザで、本来であれば労働許可証も付随しており契約できるのですが、まだスペインサッカー協会がワーキングホリデービザについて認知しておらず選手登録をさせて貰えませんでした。
辻本:宮川選手はスペイン挑戦前にクラウドファンディングで141万あつめられましたが、スペインでの生活はどうしていましたか?
宮川氏:週に5回ほど飲食店でアルバイトをしながらサッカーをしていました。
辻本:バイトをしながらスペインでのサッカーはどうでしたか?
宮川氏:とても大変でしたね。最初はなかなかチームが決まらなかったり、チームが決まってからもサッカーで結果が出なかったことがあって辛かったですね。
辻本:スペインに1度目(小学5年生)に行かれた時と今回、2018年の夏に行かれて変わったと思う部分はありましたか?
宮川氏:僕が1度目に行ったときはまだ育成年代だったため、周りの選手はお金を貰ったりはしていませんでした。ただ、今回はサッカーで生活するか否かだったので、クラブとの給料の交渉やライバルとの競争関係など色々厳しさを感じました。
日本に帰国を決意し、蘭学塾のサッカー版「Stay Dream」を設立!
スペインでサッカーをやる上での問題点とは?
辻本:2018年の夏にスペインにいって、今年の6月に帰国することになったかと思いますが、帰国の決断をした経緯を教えてください。
宮川氏:スペインでサッカーをやるにあたって3つの問題に直面したことです。1つ目はサッカーのレベルはとても高いのに給料が少ないことです。そして2つ目はビザがとても厳しいことで、3つ目はそれに伴う経済的な負担が大きかったので帰国を決断しました。
「Stay Dream」立ち上げのきっかけは?
辻本:日本に帰国されて、「Stay Dream」を立ち上げられましたが、立ち上げた理由やきっかけを教えてください。
宮川氏:「日本サッカー界を変えたい」、「海外のサッカーを日本に根付かせたい」という理念があるからです。日本には、長時間練習や理不尽な指導、暴言や体罰がある中でスペインではそういったものは一切ありませんでした。そういった環境を変えたいと思って、何かできないか考えました。その方法として”指導者の育成機関”を作ることも考えましたが、自分が指導経験者だったわけではないので、他の方法を考えました。そこで、自分が中心になった選手を育てていきたいという考えになりました。
辻本:宮川さんは今後指導者になる予定はありますか?
宮川氏:僕は指導者ではなく、サッカーの教師として人を育てていきたいと考えています。
辻本:それは具体的にどんなことを教える場ですか?
宮川氏:語学(僕の場合はスペイン語)を教えて、その語学を用いてサッカーも教えることを考えています。
辻本:「Stay Dream」は”日本サッカー界を変える” "海外のサッカーを日本に根付かせる"ことが目的だと思いますが、それらを成し遂げるにはとても時間かかかり、大変なことだと思います。それに対して、必要だと思うことや今後の方針はありますか?
宮川氏:まだ誰もやっていないような「革命」を起こさないと日本サッカー界を変えることはできないです。何十年かかってもいいので、自分の事業を拡大させていくことが必要だと思います。具体的な方針は、まだ決まっていないこともあるのでこれから決めていきたいです。
スペインの指導の質が高い理由とは?
辻本:日本もスペインもボランティアでコーチをされている方が多いと思います。ただ、その中でもスペインのコーチの質が高いのは、学べる環境などの違いなのでしょうか?
宮川氏:もちろん、スペインの指導者は日本の指導者に比べて学べる環境は多いです。ただ、根本的に違うのはやはり文化面ですね。それはサッカー文化ではなく、国としての文化です。
辻本:今の部活動のコーチや少年団などのボランティアコーチは他の仕事をフルタイムでしていて、学びたくても時間がない状況だと思います。その中で日本のサッカー界の暴力や体罰、勝利至上主義を変えるには何が必要だと思いますか?
宮川氏:僕も色んな指導者の方から指導を受けてきましたが、日本は「努力してる人が偉い」という文化があると思います。それは、グアルディオラが言っていた「プラシーボ効果」で努力した自分に満足してしまっているということです。それが「相手より走れば、努力すれば勝てる」という考えにつながり、走るだけの練習などになったりすると思います。でも、それは努力することで自分達を正当化しているだけだと思います。
もちろん、努力は大切ですが、それだけで結果に繋がるわけではないですよね。スペインのように効率の良い方法で正しい努力をすること、そしてサッカーが全てではなく、学問など他のことに力を入れることが大切ではないでしょうか。
辻本:宮川さんは「日本サッカーを変えたい」と考えていますが、日本サッカーがどのようになってほしいですか?
宮川氏:もっと楽しいサッカーができるようになってほしいです。日本はミスを嫌って、ミスしないようにしますよね。ミスするとすぐに監督が交代を命じたりもします。しかし、スペインはそうではなくて、チャレンジすることを重視しています。そのチャレンジしたことをほめて伸ばす文化があります。日本ももっとサッカーを楽しめるようにしていきたいです。
辻本:スペインのサッカーや指導の良いと思うところについてもう少し聞かせてください。
宮川氏:僕はスペインで初めてボランチを経験しました。試合で致命的なミスをして日本では即交代のような状況でも監督が試合に出し続けてくれました。ミスを責められることはなかったですね。
辻本:宮川さんが日本でこれまで指導を受けてきたチームはどんなチームでしたか?
宮川氏:僕が小学校の時にいたトラベッソは監督が元アルゼンチン代表のマラドーナが好きでした。その影響もあって、アルゼンチンやブラジルのサッカーを良く見ていたこともあって海外の指導法を取り入れたりもしていました。流経にいたことろも監督が海外に学びにいっていたので、どちらかというと海外に近い指導を受けれていました。
日本とスペインの練習内容や環境の違いは?
高校時代の宮川氏:本人より提供
辻本:スペインの練習メニューと日本の練習メニューは違うと聞いたことが実際にどうしてたか?
宮川氏:日本では、ドリブル、パス、シュートなどと項目ごとに分けて練習が多いですよね。しかし、スペインではドリブルやパス、シュートなどを組み合わせて練習することが多いです。そして、アトレティコの場合だとトップチームと同じ内容練習を10歳の時からやっています。そのため、上のカテゴリーにいっても、戦術理解などがあるため、適応しやすいと思います。
辻本:スペインは芝のグランドもとても多く、環境が整っていると思います。その点についてはどうでしょうか?
宮川氏:やはり大きな違いはチーム数だと思います。日本だとJ1、J2で40チームです。J3は15クラブ(U-23を含むと18チーム)でJFLは16クラブです。スペインだと3部リーグで80チーム、4部リーグで360チームあります。
辻本:スペインだと州リーグ(日本でいう市町村や地区)レベルでも公式サイトがしっかりあって、試合日程や結果を見ることができ、冠スポンサーもついていると聞いたことがあります。それは文化として根付いてないとできないと思いますが、文化として根づいているのは何でしょうか?
宮川氏:人口は日本の3倍以下なのにプロサッカー選手の数はスペインのほうが多く、サッカーのチーム数はとても多いですよね。日本はサッカー人口が多いのにプロ選手になれないですよね。僕が流経や慶應にいた時もとても上手いのにプロになれない選手が多くいました。もったえないですよね。そういったところが、違うと思います。
日本にサッカー文化を根づかせるのに必要なこととStay Dreamの今後の方針とは?
辻本:日本にサッカー文化を根づかせたり、サッカー界を変えるためには何が必要だと思いますか?
宮川氏:現実的には権力は必要だと思います。まずは仲間を集めて声の数を大きくしていくことが必要だと思います。まずは組織を大きくして、実績を積んでいきたいです。
辻本:どうやって組織を大きくしていきたいですか?
宮川氏:サッカー塾は今後も色んなことに取り組みますが、ビジネスモデルは今までにない新しいもので、ブルーオーシャンだと思います。例えば、まずは組織を大きくして、「Stay Dream」が母体のチームを作ることを考えていきます。それを全国に拡大させた上で海外サッカーに特化したことをやっていきたいです。
辻本:今はバルセロナやレアル・マドリード、エスパニョールなどの多くのスペインのチームが日本でスクールを展開しています。元スペイン代表のアンドレス・イニエスタがJリーグに来たこともあってスペインサッカーブームだと思いますが、そのことについてはどう感じていますか?
宮川氏:とても良いことだと思います。イニエスタのような選手が来たり、欧州のクラブのスクールができていくことで少しずつ変わっていってほしいです。
辻本:色々とお話しが聞けて良かったです。本日はお忙しい中ありがとうございました!
宮川氏:ありがとうございました!