佐世保出身の俳優・栄信さん ドラマの悪役で存在感

「現場に行くと、いつも新人みたいな気持ち」と話す栄信さん=東京都内

 長崎県佐世保市出身の俳優、栄信さん(34)=本名・林田栄信さん=が、日本テレビ系(NIB)で放送中の「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」をはじめ、テレビドラマや映画で悪役、脇役として存在感を増している。189センチと長身で武骨な雰囲気。高校卒業後に俳優を志し、芽が出ない時期が長かったが、2015年の映画出演を転機に活躍の場が広がった。「今を全力でやるだけ」と、目の前の仕事と一心に向き合う。

◆笑顔優しく

 先月下旬、東京の所属事務所を訪ねた。長髪に黒のジャケット姿は「ニッポンノワール」で演じた半グレ集団の元リーダー、喜志正臣役そのままの印象。イメージと少し違ったのは、礼儀正しい受け答えと優しそうな笑顔だった。
 3人きょうだいの真ん中の長男。6歳の頃、父に「柔道か剣道か空手か、どれか選べ」と言われて始めたのが空手だった。「本当は好きじゃなくて、ずっとやめたいと思っていた」と意外な答え。最初はとても弱かったというが、小学校高学年から県内有数の選手として活躍。県立佐世保北高3年時にインターハイの空手で個人5位に輝いた。今も帰郷すると母校を訪れ、後輩の指導に当たっている。
 高校3年のインターハイ後は「ずっと空手ばかりやっていたので、やることがなくなった」。その頃、同市出身の作家、村上龍さん原作の映画「69」のロケが佐世保であった。主演の妻夫木聡さんらが近所の通学路で撮影をしているのを見て、「慣れ親しんだ道が全然知らない道に見えた。俳優って格好いい」と思った。

◆つらい日々

 卒業後に上京し、今と別の事務所で活動を始めたが、仕事がほとんどなく、事務所を転々としてアルバイトで生計を立てる日々が続いた。「ただつらかった。見えない道を見えないゴールに向かって歩いていた感じ」と振り返る。
 転機は森田剛さん主演の映画「ヒメアノ~ル」(16年公開)への出演。オーディションで脇役を射止めたが、実は直前、故郷に帰ろうと考えていた。「10年間一度もオーディションに通ったことがなかった。100パーセント落ちると思っていた。この映画が初めて自分の名前で出た作品」と、感慨深げだ。
 この出演が契機となり、少しずつ映画やテレビドラマで役を獲得。「ニッポンノワール」と共通の人物が一部登場した日本テレビ系ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(19年1~3月)から、喜志役を演じた。
 今後も映画やテレビの出演が続く予定。先月、テレビ朝日系「仮面ライダービルド」(17~18年)出演時に共演した若手3人による演劇ユニットを結成し、東京で来春公演する計画が発表された。来月には自身初のファンイベントを東京で開催。ファンクラブの発足も予定している。

◆行動しよう

 軌道に乗ってきたかに見える今も「(仕事は)苦しいかな。作品が完成したときに『よかったな』と思うことはあっても、やっているときに100パーセント楽しいということはない」。役者としての自信も「全然ない。現場に行くと、いつも新人みたいな気持ち」と謙虚に語る。
 若い世代へのメッセージを聞くと「なんとかしようと思えばなんとかなる。『行動しよう』ということかな」と、力強く語った。
 栄信さんの情報はオフィスエルアール公式ツイッター(アカウント@office_LR)。

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