本命視できるベーシックモデル
通常ベーシックグレードは「速くはないけれど実直」であったり、「パワー感はなくとも味わい深い」と評されることが多い。しかし新型となった118iには、ベーシックグレードが持つ特有の“遅さ”が感じられない。まさにジャストパフォーマンスな、本命視できる一台に仕上がっていたのが好印象だった。
エンジンは定評のある1.5リッター直列3気筒ターボ。その出力は先代比で最大トルクが220Nmと同数値、パワーは僅かだが6PS高められた140PSとなっている。
その数値以上にパンチを感じさせるのは、トランスミッションがミニと同じ7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)となったことが影響している。変速時のクラッチミートは軽めで、やっぱりロックアップされたトルコンよりもエンゲージ感が心地良い。そして変速レスポンスも素早い。
このエンジンとトランスミッションの連携は、118iの魅力を大いに引き立てている。アクセル開度が小さい領域から適度なトルクを立ち上げてくれるから、日常領域においてストレスを感じない。かつこれを踏み込むほどに、気持ちよくブーストが立ち上がって行く。
小さなエンジンが精緻かつ爽快に回り、必要にして十分な速さを作り出している様子を五感で感じ取るのは実に楽しい。BMWはやっぱりエンジン屋。6気筒じゃなくてもその喜びは味わえるのである。
いつでもどこでも一緒に行きたくなる相棒
足回りはベーシックグレードに相応しい穏やかな仕立て。ダンピング機構もなく、タイヤもエアボリュームをきちんと採った16インチが採用されているけれど、かえってそれがステアリングの操舵フィールにしっとりとした質感を与えていた。対角ロールを使ってノーズを入れて行くのは一緒だが、その動きはより穏やかで把握しやすい。
だから118iを運転していると、クルマとの対話が日常から自然とできる。そしてスピードを上げるほどに、その会話は弾んで行く。
ディメンションは全長が5mm、ホイールベースに至っては20mmも短くなっているが、室内空間に圧迫感はない。また後部座席にも、狭さは感じられなかった。これはトランスミッションとプロペラシャフトがいらないFF化の恩恵だろう。またトランク容量は20リッター容量が増やされているという。
こうしたパッケージングの良さも含め、118iは本当にジャストバランスなベーシックカーだと思えた。子犬というには大柄だけど、いつでもどこでも一緒にいたくなる、行きたくなる。そんな相棒になってくれそうな5ドアハッチバックである。
[筆者/山田 弘樹]