日ハム鶴岡がコーチ兼任で学んだもの― 思い浮かんだ先輩の姿「こんなに複雑な心境で…」

3日に契約更改に臨んだ日本ハム・鶴岡慎也【写真:石川加奈子】

今季はバッテリーコーチ兼捕手としてチームを支える

 今季限りで現役引退した日本ハムの田中賢介氏が来年1月から球団のスペシャルアドバイザーを務める。ユニホームを脱いだ生え抜きが新たな一歩を踏み出す一方、同い年で盟友の鶴岡慎也バッテリーコーチ兼捕手はまだまだ元気だ。

 今月3日に契約を更改し、2年契約の2年目にあたる来季6000万円でサインした(金額は推定)。「巷では38歳、39歳になったら『そろそろ引退か』って言われますけど、テスト入団で入って常に危機感を持ってやってきたので、危機感は来年も変わらないです。その中でも、まだ現役でしびれる場面に出られるチャンスがある。1軍のあの緊張感といったら何ものにも変えがたい。その舞台に立てるように、今から最大限準備していきたいと思います」と18年目となるシーズンへの意気込みを語った。

 コーチ兼任1年目の今季は、前年の101試合から大幅に出番が減り、35試合の出場にとどまった。「選手として成績を残せなかったし、チームとしても5位になってしまったので、コーチとしても責任を感じます。『申し訳ございませんでした。来シーズンなんとか頑張ります』という話をしました」と交渉の場で球団に謝罪したことを明かした。

 コーチと選手の二刀流は、想像以上に難しいものだった。選手として負けられないという思いと次代の捕手を育てなければいけないとう使命感。「開幕する前までは選手9割、コーチ1割ぐらいの比重でやるんだろうなと思っていましたけど、終わってみたら選手1割、コーチ9割ぐらいに逆転した感じ。それがいいのか悪いのか別として、やらないといけないことはチームが勝つために働くこと。僕が選手で試合に出ている時は選手としてチームが勝つためにいろいろ考えてやらなきゃいけないし、コーチとしてベンチにいる時は若いキャッチャーがちゃんと自分の実力を発揮できるようにサポートしていかなきゃいけない。来年は選手10割、コーチ10割です」と今季の経験を来季に生かす。

選手兼コーチとして思い出したのは中島聡(現オリックス2軍監督)の姿

 二刀流に四苦八苦しながら思い出したのは、07~15年まで日本ハムでバッテリーコーチ兼捕手を務めていた中嶋聡(現オリックス2軍監督)の姿だったという。「中嶋さんって、こんなに複雑な心境で僕らにいろんなことを教えてくれてたんだなって。今すごい尊敬しています。でも、同じようなことをやろうとしたら、たぶんできないので、僕は僕なりに」と来季思い描くイメージは頭の中で固まっている。

「若いキャッチャーがこのあと十何年と野球界で活躍するための手助けをしたいなと思う反面、『お前ら隙を見せたら俺が常にいつでも行けるよ』というプレッシャーを与えながらやっていきたいですね。あいつらにあぐらかかせて、1軍の試合簡単に出られる状況にするのがチームとして一番良くないと思うので」

 日本ハムで4度、ソフトバンクで3度リーグ制覇した経験を武器に、一本立ちを目指す清水優心捕手や宇佐見真吾捕手の前に高い壁として立ちはだかる。一方で、コーチとしてシーズン中は主に配球面で若手捕手をサポートする。「僕は今までいろんな失敗も成功もしてきた。彼らがしなくていい失敗が何個かあると思うので、それをもっとうまく伝えられたら」と語る。

 来年4月11日で39歳になるが「まだまだでしょ!」と声を張り上げた。開幕スタメンを目指すかという問いに「僕が開幕スタメンしているようじゃダメでしょ」と即答した後でニヤリと笑って付け加えた。「でも、隙見せたら行くよという準備はしたいですね」。戸惑いを吹っ切って迎えるコーチ兼任2年目の活躍に期待したい。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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