【社説】教員の変形労働時間制 これで健康を守れるか

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 社会問題化している教員の働き方改革の一環として、改正教職員給与特別措置法(給特法)が成立した。

 公立学校の教員の勤務時間を年単位で柔軟に調整できる「変形労働時間制」の導入が柱となる。学校行事などで多忙な4、6、10、11月の勤務時間の上限を引き上げる代わりに、夏休み期間中に休暇を固めて取れるようにするのが狙いである。

 だがこれで「過労死ライン」を超すような長時間労働を是正できるかどうか疑わしい。教員が抱えている膨大な仕事や、その業務量に見合った教員が配置されているのかといった根幹的な問題は積み残されたままだ。

 現状では新制度による対策は不十分で、学校現場などから不安や不満の声が上がるのも無理はあるまい。

 勤務時間が長くなる繁忙期に働き続けることに健康被害はないのか。制度の効果は不明確で、導入する科学的な根拠もあいまいである。

 そもそも夏休みに休めるかも担保されていない。教員は夏休み中も研修や部活動などに追われ、休日をまとめて取るのは難しいとみられている。

 見掛けの時間外勤務は減るかもしれないが、繁忙期の長時間勤務を「合法的」に助長する懸念が拭えない。実効ある働き方改革に道筋を付けるには、やはり教員一人一人の仕事量を軽減させることが先決だろう。

 改正法では、教員の時間外勤務の上限を「原則月45時間、年360時間以内」とする指針が法的に位置付けられた。この指針を守ることを条件に、変形労働時間制の導入は地方自治体の判断に委ねられることになる。

 だが指針達成に向けたハードルは高い。現状では、小学校で平均月59時間、中学校で81時間の残業を強いられている。さらに過労死ラインとされる月80時間を超えて残業をしている教員は小学校で約3割、中学校で約6割にも上る。

 過労死につながるような長時間勤務を見直す道筋も定かになっていないのに、勤務時間を延ばす矛盾した制度を導入するのは危うくないか。

 制度の前提となる指針を順守するには、学校には厳密な労働時間の管理が求められる。ところが、タイムカードなどで勤務時間を把握しているケースは全国で4割にとどまる。

 まずは全ての公立学校で、夏休み期間中を含めた、客観的で正確な勤務実態の把握を急ぐべきだ。少なくとも指針を順守していない自治体には制度の導入を認めてはならない。

 給特法は、教員の時間外勤務を「自発的な勤務」と位置づけており、残業代の支給を想定していない。これが学校の労働時間の管理をずさんにしたとの指摘もある。本来は払うべき残業代である。多忙な教員の働きに報いるためにも抜本的な見直しの検討を進めるべきだ。

 小学校では2020年度からプログラミング教育が必修化され、高学年では英語も教科化される。仕事量はさらに増える。教員の業務削減を学校任せにするだけでは追い付かない。

 教員のなり手不足が深刻化している。教員の健康を守るだけでなく、子どもたちの教育を充実させるためにも、教職の魅力アップにつながるような働き方改革が求められる。