見知らぬ番号で着信あり、ワン切り電話に折り返してみると 

今は、誰もがスマートフォンを持つ時代ですので、そこに詐欺師は罠を仕掛けます。見知らぬ番号から、着信あり。はて、誰からの電話なのだろうか?何のメッセージも残さないために気になってしまい、折り返して電話をしてみると……、被害に遭う可能性があります。ワン切りに端を発した詐欺が広がっているのです。


ワン切り電話に折り返す

スマホや携帯電話に見知らぬ番号からの着信があり、うっかりと電話をかけてしまうと、どうなってしまうのでしょうか。ネット上には、不審な番号からのワン切り着信あったという書き込みが多数みられます。そこである番組では、私も同席して、芸人さんとともに、「050」からの発信番号に電話をかけてみました。

すると「お電話ありがとうございます。お金の悩みを解決します」という女性の音声ガイダンスが流れます。もしかすると、法廷利息を超えた高利でお金を貸す闇金融業者にでもつながるのでしょうか。続きを聞きました。

「自己破産、債務整理をしている方など、お金を用意できる解決方法があります。一番良い解決方法を知りたい人は、プッシュボタンの『2』を押してください」

そこで、「2番」を押すと、若い声の男性が出ました。

「お電話ありがとうございます」物腰は柔らかそうな口調です。
「お客様はご資金のご入用という形でよろしかったでしょうか?」
「はい」
「当社は金融関係ではなく、自社の方で調査をさせて頂いて、ご案内させていただいております」

ここで、名前、年齢、そしてクレジットカードの有無を尋ねてきます。こちらが「クレジットカードは持っていません」と答えると、別の担当者に電話が替わりました。

「今回は、弊社からのご融資ではなく、現金化枠をご紹介できます。50万円の枠まで取れましたので、ご安心ください」
「現金化とは何ですか?」と尋ねると、
「何かの商品を購入して頂いて、それをお店で買い取って、現金にするというものです」
「具体的に何をすれば、よいですか?」
「〇〇〇という最新のスマートフォン機種をご存じだと思いますが、こちらを携帯ショップにて購入して頂きます」

男は、スマホの購入を勧めてきます。

悪質な詐欺師の手口とは

「今、国は、スマートフォンの普及を行っていまして、キャンペーンをしております。弊社もこのキャンペーンを利用し、資金のご提供を無利息でやらさせて頂いています」

そして、購入する商品名が伝えられました。

「1台定価15万円のものを購入して頂きますが、今回は割引などすべて適用されていますので、お客様は実質10万円でご購入することができます。それを弊社の提携ストアさんにて、定価の90%で買い取って頂きます」

つまり、10万円で買ったものを、買い取り業者に13万5千円で買い取ってもらう。1台につき、3万5千円の利益が出るというわけです。

「この最新のスマホなど3台購入して頂きますので、10万円を手にできることになります。ただし、毎月のお支払は、ご自身でしっかりとしていただきます」
「携帯端末や利用料金は自分が払うということですか?」と尋ねると、
「はい。電話は必ず、こちらで解約しますので、通話料金は発生しません」
「解約はどのタイミングで行うのですか?」
「だいたい、2~3週間ですね」

つまり、解約までのタイムラグがあるということは、その期間に、詐欺などの犯罪に電話が使われる可能性があります。おそらくは、これは、詐欺の電話を用意する道具屋の集団ではないかと思われます。

「郵送で、指定のリサイクルショップに商品を送っていただき、その買い取り代金を、お振込み致します。お住いの住所はどこですか?」
「〇〇区です」

男は住所を聞き出すと、「お近くの当社の提携先になっているショップさんに電話を入れて予約をしておきますので、取りに行っていってください」と、ぐいぐいと話を引っ張っていきます。おそらく、押しに弱い人は、ずるずると購入契約の方に話を進められてしまうことでしょう。相手は提携先などともっともらしく言っていますが、携帯ショップに電話をかければ、誰でも商品の取り置きの予約はできるのです。

詐欺師の側には、言葉巧みに話を展開して、私たちを誘導するマニュアルもあり、長く会話をすればするほど、騙される危険性が増してきますので、「おかしい」「変だな」と思った時点で、すぐに電話を切ることが大事です。

さらに、男はショップに行った際の購入の注意点を話します。

「くれぐれも、すぐに売りますとかを、店員に絶対に言わないでください。転売目的の購入はダメなので」その通りで、転売を目的とする購入は禁止になっています。これが、いけないことをわかっていながら、転売購入を指示してきます。ここで、その矛盾を芸人さんに突っ込んでもらうと、相手は嘘がばれる可能性があると思ったのでしょう。

「じゃあいいです」とあっさりと電話は切れました。

実際に捕まった詐欺グループも

詐欺グループの手口はこうです。

ワン切りの電話をかけて、お金を用意できると言って最新のスマホを購入させ「買い取ります」という名目で、商品を送らせます。ですが、結局、お金は振り込まれないのです。すでにこの手口を使い、2019年10月に、総額1億2千万円相当のiPhoneなどをだまし取っていた男ら12人が警視庁により逮捕されています。

過去、スマホや携帯電話の詐取を行っていた手口を見ても、詐欺師らは騙し取ったものを振り込め詐欺グループに売るだけでなく、リサイクルショップなどに持ち込み、転売して多額の利益を得ることもあります。12月に入り、何かとお金が入用になる時期ですが、くれぐれも、ワン切りなどをきっかけにした、お金が簡単に手に入るという甘い誘いには、乗らないようにしてください。

これまで「詐欺に遭ったことはありませんか?」と、街頭などで尋ねると「ない、ない。だって、私はお金を持っていないからね」と答える人もいましたが、今や「お金がないから騙されない」という常識は捨てた方がよいでしょう。今回の自動音声を使った詐欺電話のように、お金の工面に困っている人を狙って、騙そうとする手口もあるのですから。

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