住民「こんなのどかな港で…」 天草市で覚醒剤600キロ押収

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大勢の捜査員で騒然とする現場=11日午後5時30分ごろ、天草市魚貫町の魚貫港
現場で押収物を調べる捜査員=11日午後5時40分すぎ

 「こんなのどかな街で…」「覚醒剤だなんて怖い」ー。覚醒剤約600キロが押収され、台湾籍や日本人計11人が福岡県警や警視庁、熊本県警、海上保安庁などの合同捜査本部に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された事件。覚醒剤を隠し持っていた船が着岸した天草市の魚貫[おにき]港では11日の午後から12日にかけて、捜査員が殺到し、騒然とした雰囲気に。住民からは驚きと不安の声が聞かれた。

 合同捜査本部は密輸計画の情報から、天草市周辺の海域や沿岸部を警戒。だが、目指す船は沖合でエンジントラブルを起こし、捜査の網から漏れつつあった。

 11日午前10時ごろ、同市魚貫崎の約20キロ沖合に停泊している不審な船を、地元の遊漁船が発見。船上で色黒でニット帽をかぶった漁師姿の男ら3人が、手を振ったり手招きしたりしていたため、「助けを求めていると思い、救助に向かった」と遊漁船の男性船長(55)。ジャージー姿の20代ぐらいの男が「釣りに来たが、燃料がなくなり困っている」と、日本語で話し掛けてきたという。

 相手が船の中からロープを取り出したため、船を魚貫港までけん引し、午後0時半ごろ着岸。通報を受けた牛深署のパトカー2台が駆け付けた。

 遊漁船の船長は「人命救助のつもりで船を港までけん引したのに、まさか覚醒剤を密輸していたなんて…」と憤る。

 同日午後3時すぎ、続々と福岡や熊本、宮崎、鹿児島ナンバーの捜査車両が詰め掛け、100人ほどの捜査員が船を取り囲んだ。岸壁に敷かれたブルーシートの上には、白いものが入った袋がいくつも並べられた。「これが全部覚醒剤かと思うと、背筋がぞっとする」と近くの女性事務員(47)。

 その日の午前10時ごろ、同市牛深町のガソリンスタンドに不審な電話があったという。「ヨシダと名乗り、ガス欠で海上にいるので、給油に来てもらえないかという内容。ただ、緯度などを言うばかりで、よく分からなかった」と経営者の中村富人さん(66)。正午ごろ折り返し電話をかけたら「もう大丈夫だと言われた」という。

 一夜明けた12日は、船の周りに規制線が張られ、捜査員数人が船の内部や底などを捜索した。港のある魚貫2区長の高石光明さん(67)は「1989年、近くの海岸から中国人約170人が密入国した以来の大事件。まさかこんなことが再び起こるとは」と驚いていた。(谷川剛、米本充宏)

(2019年12月13日付 熊本日日新聞朝刊掲載)