スポーツの底力を見たい

 「ジュニア世代の野球離れが叫ばれ、娯楽も多様化。さらにラグビーを筆頭に他スポーツの躍進など、野球には向かい風が吹いている。ただ、それでもまだ信じている。野球の底力を」▲ある雑誌のコラムで読んだのだが、この手の考え方には、やはり違和感を覚える。おそらくこの筆者は「スポーツ」を好きなわけではないんだろうな、と▲確かに野球人気は落ちているのかもしれない。10月の日本シリーズのソフトバンク-巨人戦。ビデオリサーチが計測した関東地区の世帯視聴率4試合平均は1桁台だった。王貞治、長嶋茂雄両氏のいわゆる「ON」を知る世代からすれば、隔世の感もある▲が、だからといって、向かい風と捉えるのはどうだろう。若年層の人口減は今に始まったわけではない。この状況でそれぞれが自分たちの競技だけを見ているようでは、スポーツ全体の発展など望めるわけがない▲では、スポーツ界は何をすべきなのか。人にはそれぞれ価値観がある。スポーツに関心が薄い人も大勢いる。そんな人たちに少しでも興味を持ってもらえるように、一つにまとまり、知恵を絞り、実践することが基本ではなかろうか▲来夏、五輪が東京で開催される。実施競技数は33。そこで見せてくれるであろうスポーツの底力と夢を、楽しみに待ちたい。(城)

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