1リーグ、10球団が覇権を競う韓国プロ野球リーグ 日本の好敵手の歴史を振り返る

韓国はプレミア12初代王者にも輝いた【写真:Getty Images】

年間試合数は144試合で上位4チームがポストシーズンに進出

 プロ野球の主要なトップリーグには、アメリカのMLB、日本のNPBに加えて韓国のKBO(韓国野球委員会リーグ)、台湾のCPBL(中華職業棒球大聯盟)がある。KBOやCPBLも毎年、多くの観客を集め、国内屈指の人気スポーツになっている。

 KBOは、1982年に発足。当初は韓国国内のアマチュア選手と、在日韓国人でNPBでプレーする選手などで編成されていたが、37年が経過し今では韓国独自の育成システムも確立し、ドラフトで入団した韓国野球生え抜きの選手で構成されている。

 現在のKBOは1リーグ10球団からなっている。地区制などはなく、各球団は16回総当たりでペナントレースを展開する。年間試合数は144試合で上位4チームがポストシーズンに進出する。2位から4位の3球団がトーナメントで戦い、この勝者が1位チームと7回戦制の「韓国シリーズ」を戦って決着をつける。

 韓国リーグの10球団はそれぞれ2軍を持っているが、これに加えて2軍リーグにだけ参戦する尚武フェニックスというチームがある。これは韓国軍が運営するチーム。韓国は兵役がある。プロ野球選手も兵役の義務があるが、兵役中の選手に軍務の傍ら野球をさせるために作られたチームが尚武フェニックスだ。

 今年の途中まで、同様の目的で兵役中の選手をプレーさせる警察野球団があった。警察野球団はNPB2軍も参加する台湾の「アジアウィンターリーグ」にも参加していたが、今年の8月に解散した。

2019年の観客動員は約728万人、1試合平均は約1万人

 KBOは、年間720試合の公式戦を行うが、2019年の観客動員は約728万人。前年より10%程度減少。1試合平均で約1万人だ。MLBの6849万人、NPBの2653万人に比べれば少ないが、それでもMLB、NPBに次ぐ世界3位の観客動員のあるプロリーグだ。大韓民国の人口は約5100万人だから人口の14%がKBOを見に来たことになる。MLBとNPBはともに21%程度だ。

 斗山ベアーズ、LGツインズなどの人気チームは観客動員が年間100万人を超えている。KBO各球団の本拠地球場の客席数は、サムスン・ライオンズの本拠地、大邱(テグ)サムスン・ライオンズ・パークの2万9000人が最大。3万人以上の定員を持つ球場はないのが現状。

 屋根付きのドーム球場はキウム・ヒーローズの本拠地の高尺(コチョク)スカイドームだけだ。この球場は今年のWBSCプレミア12、韓国ラウンドの会場になった。KBOの本拠地球場は、すべてアメリカ式の内野に芝を張ったグラウンドになっている。日本式の内野が土のグラウンドはない。

 KBOの試合は、球場中が一体化して本拠地球団を応援する。日本のように公認応援団の席はなく球場全体で応援を繰り広げる。ロードチームの応援は非常に少ない。ホームチームは球団スタッフである応援リーダーやチアリーダーが先導して熱烈な応援を繰り広げる。

 球団ごとに名物になっている応援も多い。釜山に本拠地があるロッテ・ジャイアンツの本拠地、社稷(サジク)野球場では8回には「釜山港へ帰れ」の大合唱がある。

 KBOの試合でもNPB同様、盛りだくさんのアトラクションが用意されている。ビールやスナックも販売されている。NPBの球場よりも「家族席」が多いのが特徴だ。ファンは野球だけでなくいろいろな楽しみを満喫できるのだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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