JDI、いちごトラストと最大900億円の資金調達で本格交渉へ

 経営再建中の(株)ジャパンディスプレイ(TSR企業コード:294505385、以下JDI)は12月12日、資産運用会社のいちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド(シンガポール、以下いちごトラスト)との間で、800億~900億円の資金支援に向けた最終的な協議に向け、基本合意の締結を発表した。2020年1月中に最終的な合意契約を結び、臨時株主総会など必要な手続きを経て、年度内の資金調達を目指す。

 いちごトラストは、2010年に組成され、主に欧米の大学基金や財団、年金基金から資金を集めている。2019年9月末時点の運用残高は6,810億円。日本企業への投資に特化しており、投資スタンスは中長期保有が前提とされる。
 JDIは、2019年4月に台湾・中国の企業、金融投資家で形成されるSuwaインベストメントホールディングス(以下Suwa)から最大800億円にのぼる金融支援の受け入れを発表していた。しかし、その後の交渉で当初の枠組みが崩壊。交渉は継続しているが、事態に動きはみられなかった。この間、JDIの主要株主である(株)INCJ(TSR企業コード:033865507、旧:産業革新機構)の追加融資などで資金を繋いでいるが、JDIの取引先を中心に資金繰りを懸念する声はくすぶっていた。
 今回のいちごトラストとの基本合意で、セーフティーネットが拡充された形だが、これまでの金融支援の迷走から、「どこまで信頼していいのか」(JDIの取引先)との声は根強い。

 JDIの菊岡稔・代表取締役社長は、12日17時から会見した。菊岡社長は取引先との関係性について、東京商工リサーチの質問に「正直申し上げて、お客様やサプライヤーにご心配をかけている。事業を安定的に継続していく自信は持っている。債務超過の解消の道筋である今回の資金調達を完了すれば平常時に即した形での取引をして頂けると思っており、道筋を丁寧に説明することによってご理解を頂いている」と答えた。

会見するJDI・菊岡稔社長(12月12日)

‌会見するJDI・菊岡稔社長(12月12日)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年12月16日号掲載予定「SPOT情報」を再編集)

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