いつの日か来る"おひとりさま"に備えている人ほど「幸福度」が高い?

単独世帯(一人暮らし)は、これからも増え続けることが予想されています。国立社会保障・人口問題研究所では、今から約20年後の2040年には、全世帯の約4割が一人暮らしとなると推計しています。

これまでは、家族と暮らすことが「当たり前」の社会でしたが、これからの人生100年時代は、それが必ずしも「当たり前」とは言えない社会になりつつあります。

一人暮らしが増えることの背景の一つは未婚化です。未婚化が進んだことにより、50代、60代の一人暮らしが増えるとみられています。

もう一つは長寿化です。夫や妻に先立たれた後、高齢期を一人で暮らす人が増えるからです。結婚し、夫婦で生活している人でも、いつかは夫や妻に先立たれ、一人暮らし(シングル生活)を経験する人が多くなるでしょう。そのようになった場合を考え、準備をしておくことも必要です。

どのような準備が必要でしょうか。幸せなシングル生活のための備えについて考えてみましょう。


シングル化への備えをしているか?

実際、既婚者のなかで、将来、離婚や死別により一人暮らし(シングル化)になったときに備えて何か準備をしている人がどのくらいいるでしょうか。

第一生命経済研究所が2019年1月に実施した「今後の生活に関するアンケート調査」によれば、女性は若いころから準備をしている人が多いです。

平均寿命が男性よりも女性の方が長いことを知っていますので、将来的に一人暮らしになる可能性が高いことを多くの女性は自覚しているのでしょう。反対に、男性は長生きをあきらめてしまっているのでしょうか、年齢が高まるにつれて準備をする人が少なくなります。

図表1:一人暮らしへの準備をしている人の割合

注:夫や妻がいる人が対象
資料:第一生命経済研究所「今後の生活に関するアンケート」2019年1月調査

おひとりさまへの備えをしている人は幸福度が高い

でも、自分が何歳まで生きるかは誰にも分りません。長寿に向けて備えておいて不足はないと思います。

実際、シングル化に備え、何らかの準備をしている人は、していない人よりも幸福度が高くなっています。年代別にみると、20 代ではあまり差はありませんが、30 代から50 代にかけてその差が開きます。

年齢とともに伴侶に先立たれる可能性を自覚し、1人でも生きられるように準備をすることは、将来への不安を軽減させることにつながるのかもしれません。

図表2:シングル化への備えの有無別にみた幸福度得点

注: 夫や妻がいる人が対象。幸福度得点とは、自分の今の幸せの程度を0点(とても不幸)から10点(とても幸せ)までの得点でたずねた平均値。
資料:第一生命経済研究所「人生100年時代の『幸せ戦略』―全国2万人調査からみえる多様なライフデザイン」東洋経済新報社2019年

一人暮らしに備え、どのような準備をしているか?

シングル化に備えて準備をしているものが「特にない」と回答した人が約3割いますが、多くの人は何らかの準備をしていることがわかります。

具体的な準備内容としては、「生命保険・医療保険」や「生計維持のための収入・仕事の確保」といった経済面での備えをしていると回答した人が多くなっています。1人になっても生計を維持できるよう、経済面での準備が重要と考えている人が多いようです。

図表3:シングル化への備えとして準備していること及び準備内容別にみた幸福度得点

注 :夫や妻がいる人が対象
資料:第一生命経済研究所「今後の生活に関するアンケート」2019年1月調査

幸せをもたらすシングル化への備えとは?

では、そのような備えが幸せにつながるのでしょうか。

幸福度得点との関連をみますと、経済面で備えをしている人よりも、「友人や知人との良好な関係づくり」や「趣味やライフワークの確保」をしている人の方が幸福度得点が高いです。これらの他、「家族関係の維持・改善」や「健康の維持・管理や健康づくり」も続いています。

自分の好きな趣味やライフワークがあれば、それを通じて人とのつながりもでき、生きる世界が広がります。外出の機会も増え、体を動かすことで、心身の健康づくりにもつながります。

これからの人生100年時代、人は誰でもいつかはシングルになる可能性があります。年齢とともにシングル化へのリスクも高まるなか、経済面での備えも大事ですが、趣味やライフワーク、人とのつながりをもつことが幸せな人生を生きることの一つのヒントになるようです。

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