やまゆり園管理者見直しを神奈川知事説明 入所者家族は抗議

 2016年7月に入所者19人が殺害された神奈川県立障害者施設「津久井やまゆり園」建て替え後の2施設の指定管理者の見直しを巡り、黒岩祐治知事は14日、入所者が仮移転している同園芹が谷園舎(横浜市港南区)を訪れ、入所者やその家族らに方針転換への理解を求めた。家族からは抗議や不安の声が相次いだほか、同園を運営する社会福祉法人「かながわ共同会」は24年度までの現在の指定管理期間の短縮には現時点で応じない考えを示した。

 知事は5日の県議会本会議で、共同会の別施設の元園長が強制性交容疑で逮捕されたことに加え、園入所者への身体拘束などの情報が寄せられたなどとして、元の場所の相模原市緑区千木良地域と、仮移転先の芹が谷地域にそれぞれ整備する施設の運営法人を引き続き共同会とする従来の方針を撤回。現在の指定管理期間を短縮した上で、両施設の指定管理者を新たに公募する方針を示していた。

 説明会には、入所者約60人を含む計約170人が出席。知事は冒頭、利用者目線に立った支援が不十分だったとして入所者に謝罪。殺人罪などに問われた元職員の裁判員裁判が来年1月から始まることを挙げ、「園でのかつての支援に疑念の声が多く寄せられている。裁判でそうした事実が出てから公募をし直しては21年度の運用開始には間に合わない。ここで仕切り直しが必要と判断した」などと説明した。

 質疑応答では、入所者家族からの「職員との信頼関係が一番大事だ」との投げ掛けに、知事は「支援に良くないところがあれば手を打たねばならない」などと応じた。入所者からも「みんなと一緒にいたい」「心の底から園を愛している」といった意見が出された。

 説明会は予定より30分ほど長い約1時間に及んだ。終了後、取材に応じた知事は、園を退所した利用者が地域でいきいきと過ごす姿を目の当たりにしたエピソ-ドに触れ「一人一人の目線に立った支援がいかに大事か痛感した」と強調。「園を早く再生することを優先し、『なぜ園で事件が起きたのか』『なぜ元職員が犯行に及んだのか』について検証できていなかった」と述べ、支援実態の検証の必要性を指摘した。

 一方、共同会の草光純二理事長は「元園長の不祥事と、津久井やまゆり園の指定管理者見直しの話がなぜ結びつくのか」と批判。「一連の知事の発言は心外だ。判断の根拠としている事実に納得できない限り、指定管理期間の短縮は認められない」と話した。

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