福山さん命名「きゃあまぐる坂」 急坂ランキング1位 長崎市

 坂の街長崎の魅力を発信している市民グループ「MODAL(モーダル)」が、長崎市内の「急坂ランキングトップ10」をまとめた。最大斜度をスマートフォンのアプリを使って測定。1位は20.8度を記録した飽の浦町の九州電力飽ノ浦変電所前の坂だった。「きゃあまぐる坂」の愛称で知られ、同市出身のシンガー・ソングライター福山雅治さんが名付け親という。モーダル代表の林田英昭さん(57)は「どの坂も個性豊かで魅力的。一度訪れて」と話している。

1位になった「きゃあまぐる坂」=長崎市飽の浦町

 同市出身の林田さんは東京での会社員時代、同僚たちから「長崎は坂道がすごいよね」と何度も言われた。6年前にUターン。身近な坂道を歩くうちに、人々の暮らしに溶け込んでいる風情ある坂道の魅力に引き込まれていった。

「きゃあまぐる坂」の斜度をスマートフォンを使って測る林田さん

 「坂は長崎ならではの文化。地域の活性化にもつながるはず」。そんな思いから30~70代の男女5人で2013年、市民グループを結成し、まちおこしに乗り出した。イラストが得意なメンバーが、知名度などがある21カ所の坂道を美少女キャラクターとして擬人化し、缶バッジ「ながさき坂道むすめ」(1個387円)にして発売。市内の坂道について紹介したホームページ「ながさき坂道めぐり」も公開している。

モーダルが発売中の缶バッジ「ながさき坂道むすめ」

 今回のランキングは公道と私道を区別せず、車が通れる道を対象に調査。「芝目を読むように」(林田さん)丹念に探し回ったという。
 1位の「きゃあまぐる坂」は長崎弁で「とってもきつい坂」という意味で、唯一の20度超えだった。林田さんは「上から見下ろすとスキーのジャンプ台のようで怖い」。福山さんが15年夏の稲佐山ライブに合わせて企画した競走イベント「きゃあまぐる坂GP」で名付けたという。イベントは長崎青年協会が「福山雅治杯」の名称で引き継ぎ、現在も毎年開催。知名度は全国区になりつつあるという。
 2位は諏訪神社(上西山町)の長坂の横にある道路。「動物ひろば」につながる坂道で、18.9度だった。「雨の日にはタイヤがスリップすることも」と林田さん。3位は赤迫1丁目の坂道で17.1度。赤迫保育園の近くだ。坂の上にはマンションや住宅が立ち並び、交通量が多い。ベスト10は市内各地に点在。ちなみに観光地として有名な「オランダ坂」は13.1度で11位だった。

3位に入った赤迫保育園近くの坂道=長崎市赤迫1丁目

 坂道には「疲れる」「不便」などといった負の側面もあるが、林田さんは「逆に急げないので生活のリズムをゆっくりさせてくれる。坂の上からの眺めはいいし、夜景が美しいのも坂のおかげ。坂道には何かしらのご褒美がある」と魅力を語る。
 長崎の坂道を紹介するための切り口は、斜度のほかにもいろいろあるそうだ。歴史、名前の由来、映画のロケ地…。林田さんは「仮想現実(VR)を利用するのも面白い。全国の人が長崎の坂を訪ねたくなるような情報をもっと発信できたら」と意欲を見せた。
 今回のランキングはあくまで暫定。「近所の坂道の方がもっと急斜面だ」という情報があれば、ホームページのメールフォームから連絡してほしいと呼び掛けている。

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