超高均一で究極に透明 常識を覆すゲルを東京大学が創出

ソフトマテリアルの常識を覆す、極めて均一性の高いゲルの合成を、東京大学物性研究所の研究グループが成し遂げた。

more

ゼリーに代表される高分子ゲル材料は、我々の身の回りにありふれたソフトマテリアルである。その用途は、おむつや化粧品の吸水・保水材、DNAやタンパク質の分離膜、抗がん剤の徐放化担体など幅広い。ゲルは溶液中で高分子同士をピン留(架橋)することで作られる。この架橋反応は、溶液中で乱雑に動く高分子の間で確率論的に進むため、形成される高分子架橋構造も必然的に不均一なものになると考えられてきた。一方、本研究では、ゲル化前の溶液内で高分子を緻密に充填することで、ゲル化後でも均一に分散した状態を維持できることを突き止めた。溶液内の空間が常に均一に埋め尽くされた状態で架橋反応を進めることで、最終的な架橋構造も極めて均一なゲルの創出に成功したという。通常のゲルの網目構造は不均一なため、レーザー光を当てると乱雑な干渉スポット(スペックル)が検出される。一方、本ゲルを光散乱やX線散乱で評価すると、空間不均一性を示す散乱光のスペックルが一切見られなかった。それだけではなく、ゲル化前後での高分子鎖の空間相関・時間相関が全く同一であったため、もはや一般的な散乱法ではゲル化を検出できず、実際にそれを触ってみるまで、溶液なのかゲルなのか判別できないという。「ゲルは不均一な網目構造をもつ」という常識を覆し、ゲルという状態すら再定義するものだ。本ゲルは、構造不均一性に由来する光の異常散乱が起こらないため、ソフトマテリアルとして達成しうる理論上限の透明度を実現しており、光ファイバーなどへの応用が期待される。また、本手法についても、高分子の種類・反応様式によらず幅広い高分子種に適用できるため、医学、薬学、化学、光学、電子工学など様々な分野への波及効果が期待される。論文情報:

【Science Advances】Polymer gel with a flexible and highly ordered three-dimensional network synthesized via bond-percolation

© 大学ジャーナルオンライン