街は生き物

 「街は生き物なんです」。長崎市の中央地区商店街の役員から、そんな言葉を聞いたことがある▲時代、時代で求められる商品やサービスは変わり、それを提供する店の集積度などで商業地の「中心」も移り変わっていくのだ-と。2000年に夢彩都、アミュプラザ長崎などが相次ぎ開業し、同市で既存商店街を交えた流通戦争が加速していたころの話だ▲同市ではその後、みらい長崎ココウォークも開業。複数の大型商業施設の登場で、商業地の中心が変わったというよりも、「重心」の分散が進んだ形だっただろう▲JR九州が先日、新たな長崎駅ビルの概要を発表した。外資系高級ホテルなどが入り、商業フロアの面積はアミュプラザを上回る。23年春に商業フロアの一部などを開業させるという▲市内では、ジャパネットホールディングスの「長崎スタジアムシティプロジェクト」も進行中だ。大型開発が続く状況に、交流人口の増加に寄与すると行政の期待は大きい。一方で、競争相手が増えることになる既存商店街や小規模店への影響も懸念されている▲商店街は地域の歴史や伝統文化を継承する役割も担っていて、その消長は地域づくりの行方に関わる。変わりゆく長崎の街の中で商店街が生き残りをかけて取り組む、にぎわい創出の試みも注目される。(久)

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