WECバーレーン:トヨタ、2019/20年3勝目を1-2で達成。小林可夢偉「この勢いを維持したい」

 12月14日、中東バーレーンでWEC世界耐久選手権第4戦バーレーン8時間レースの決勝が行われ、シリーズ最高峰のLMP1クラスに挑むTOYOTA GAZOO Racingは、7号車トヨタTS050ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)が総合優勝。僚友の8号車トヨタTS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組)が総合2位となり、2019/2020年シーズン3度目のワン・ツー・フィニッシュを飾った。

 今シーズンから最高峰クラスに導入された“サクセス・ハンディキャップ”によって、トヨタTS050ハイブリッドのハイブリッドブースト及び、燃料使用量などが大きく制限されているトヨタ。バーレーンでのシーズン第4戦は、ランキング首位の8号車に1周あたり最大2.72秒のハンディが課せられ、7号車にも2.51秒/1ラップの調整が行われるなかで迎えた。
 
 前日の公式予選でセカンドロウの3、4番手グリッドを確保したトヨタは8号車のスタートドライバーにブエミ、7号車はコンウェイという布陣で8時間レースをスタートさせる。だが、そのスタート直後にレース展開を左右するアクシデントが発生。3番手につける8号車トヨタの目の前で、ポールシッターの1号車レベリオンR13・ギブソンと2番手を走る5号車ジネッタG60-LT-P1・AERが接触、スピンしたのだ。
 
 このアクシデントを間一髪で交わした7号車は集団のトップに躍り出るが、一方の8号車は混乱を避けるためにコース外に避け、コース復帰の際に別のマシンと接触してマシンフロント部にダメージを負ってしまう。
 
 その後、ブエミ駆る8号車は1回目のピットイン時に、ダメージ負ったフロントカウルを交換したため3番手から4番手にポジションを落とすが、43周目には6号車ジネッタとの攻防を制してふたたび3番手に浮上した。この間、トップを走る7号車トヨタは、コンウェイが後続に対するギャップを着実に広げていく。

 すると、スタートから2時間半が経過しようかという頃、2番手を走行中だった1号車レベリオンにマシントラブルが発生。約7分間のピット作業を強いられることでハートレー駆る8号車が2番手となり、トヨタがワン・ツー体制を築いた。
 
 レース中盤以降、7号車と8号車はそれぞれのドライバーローテションを守りながらリスクを抑えた堅実な走りで周回。ライバルのジネッタ勢がトラブルで姿を消すなか、7号車のアンカーを務めたロペスが257周目にチェッカーフラッグを受けて8時間レースの総合ウイナーとなった。また、8号車が1周遅れの2位でフィニッシュし、トヨタは今季3勝目を3度目のワン・ツー・フィニッシュで飾ることとなった。

「バーレーンで優勝することは大変難しいと思っていたので、今日のワン・ツー・勝利は素直にうれしいです」と語るのは、TOYOTA GAZOO Racingの村田久武WECチーム代表。

「チームはすべての分野でできる限りの準備をし、TS050ハイブリッドの性能を最大限に引き出すことができました。また、今日のレースは最初から接戦で、それが最後まで続くと思っていましたが、ライバルたちがトラブルに見舞われてしまったのは少し残念でした」

■コンウェイ「この結果はレースウイーク序盤には予想できなかったもの」

7号車に次ぐ総合2位となった8号車トヨタTS050ハイブリッド
2019/2020年シーズンのWECで2勝目を挙げた7号車トヨタTS050ハイブリッド

「2019年は、2回目のル・マン優勝と世界チャンピオンを獲得した大変良い年で、今日の勝利がそれに花を添えてくれました。続く2020年がさらに良いものとなりますように、チーム一丸となって努力を続けます」

 開幕戦シルバーストン以来、3戦ぶりに表彰台の頂点に立った可夢偉は「勝利で今年最後のレースを締めくくることができて最高です。まだシーズンは長いですが、今日の結果は本当にうれしいですし、この勢いを維持していきたいです」とコメント。
 
 また、自車に運がなかったと語った一貴は「8号車にとっては最高の結果ではありませんが、チームとして最高の結果を得ることができました」とチームのワン・ツー・フィニッシュを祝福した。

 この他、TOYOTA GAZOO RacingドライバーのWEC第4戦バーレーン後コメントは以下のとおりだ。

■7号車トヨタTS050ハイブリッド

●マイク・コンウェイ

「ワン・ツー・フィニッシュというのは最高の結果だ。レースをとおして可能な限りプッシュを続けたが、この結果はレースウイーク序盤には予想もできないものだった。素晴らしい仕事をしてくれたチーム、チームメイトの全員のおかげだよ」

「今週、バーレーンで走り始めたときは苦戦したけれど、チームがTS050ハイブリッドを見事に仕上げてくれたんだ。この最高の勝利により、ドライバーズランキング首位に立ててたこともうれしいよ」

●小林可夢偉

「勝利で今年最後のレースを締めくくることができて最高です。素晴らしい仕事をしてくれたチームに感謝します。強力なライバルとの厳しいレースになることは分かっていましたが、我々はミスなく、素早いピットストップにも助けられて着実にレースを戦いました」

「マイクとホセも素晴らしい走りでした。まだシーズンは長いですが、今日の結果は本当にうれしいですし、この勢いを維持していきたいです」

●ホセ-マリア・ロペス

「本当にうれしい勝利だ。この週末、8号車のクルーを含めたチームの全員が素晴らしい仕事をしてくれた。サクセス・ハンディキャップで非常に困難な状況にもかかわらず、ワン・ツー・フィニッシュを飾ることができたのはチームのおかげだ」

「マイクと可夢偉もいつものように素晴らしかった。今年最後のレースで勝てたので、今年の素晴らしい結果を祝ってクリスマスと新年を迎えられるのは最高だよ」

TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタTS050ハイブリッド

■8号車トヨタTS050ハイブリッド

●中嶋一貴

「今日はスタートから我々8号車には運がありませんでした。あのアクシデントで大きく順位を落としたため、その時点で2位が我々の目標となりました」

「その後は着実にレースを戦い、チームとしてワン・ツー・フィニッシュを果たせたのは良かったです。我々8号車にとっては最高の結果ではありませんが、チームとして最高の結果を得ることができました」

●セバスチャン・ブエミ

「我々にとってはタフなレースだった。スタート直後、目前で発生したジネッタとレベリオンのアクシデントを避けるためコースアウト、戦列に復帰しようとした時に他車と接触してしまった」

「その影響もあり、7号車に挑むことはできなかったよ。しかし、チームとしては目標だったワン・ツー・フィニッシュを果たすことができたので満足しているし、次戦のオースティンが楽しみだ」

●ブレンドン・ハートレー

「思いどおりのレースにならなかった。セブのスタートは不運だったね。前車のアクシデントに巻き込まれてどうすることもできず、その後はダメージを負った車両でレースを戦わざるを得なかったんだ」

「7号車を抜くのが難しいことは分かっていたが、彼らにプレッシャーを与え続けた。7号車はミスなく、ピットも迅速で素晴らしいレースをし、最終的にTOYOTA GAZOO Racingがワン・ツー・フィニッシュを果たせたことは素晴らしい結果だ」

スタート直後のアクシデントの影響で、マシン左フロントにダメージを負った8号車トヨタTS050ハイブリッド
表彰台に上ったTOYOTA GAZOO Racingのドライバーたち

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