下半身密着ダンス「ランバダ」バブル時代のど真ん中に世界的大ヒット!

1989年 12月16日 カオマのアルバム「ワールド・ビート」がリリースされた日(ランバダ 収録)

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バブルは4年3か月、1986年12月から1991年2月まで

一般的に「バブル時代」とは、1986年12月から1991年2月までの4年3か月を指すらしい。当然のことながら当時は「バブル」という言葉は使われておらず(一部の学者は指摘していたらしいが)、少なくとも僕の実感では「景気の悪くない時代」くらいのものだった。

自分的には大学生から社会人になったタイミング —— もちろん、それぞれの立場や環境によってその受け止め方は全然違うものになるのだろうが、良くも悪くも、僕個人はバブルの恩恵に預かったことは… ほぼない。なので、今と比べてすごく良かったかと聞かれたら、決してそんなことはないと声を大にして言える。

特に若い人には知っておいて欲しいのだが、時代にはその時代々々の抱える問題が多数あって、いつだってその問題を解決させながらちょっとずつ前に進むだけなのだ。

ましてや時代の大きな転換期である現在が、80年代に比べて悪いないなんてことは絶対にない。そう思わせておいた方が都合のいい人たちによって作り上げられた幻想に過ぎない。時代や年齢なんて関係なく、希望のない人間に希望は訪れないだけの話である。

盛り上がるワールド・ミュージック!情熱のジプシー・キングスや下半身密着ダンス「ランバダ」

話が逸れてしまった。さて、80年代も後半に入ると、僕はビルボードのチャート上位に入るような音楽に全く興味が持てなくなり、見たことも聴いたこともないような音楽に想いを馳せるようになっていった。

イギリス以外のヨーロッパ、アフリカ、アラブ、東南アジア、パシフィック、中米カリブ、南米…… 当時はワールド・ミュージックと一括りで呼ばれていたジャンルの音楽だ。

わかりやすいグループ名を挙げると、「バンボレオ」「ジョビ・ジョバ」といった曲や鬼平犯科帳のエンディングでも有名なジプシー・キングス。そして、下半身の密着度が高いダンスであるがゆえに、踊っただけで妊娠! という逸話も生まれた「ランバダ」のカオマなどが挙げられよう。どちらもフランスを中心に活動していたグループで、全世界的なヒットを叩き出していた。

くれぐれも言っておくが(当たり前だが)、ワールド・ミュージックはこれだけではない。しかし、ごくごく一般的に認知されていたワールド・ミュージックは、この2つのグループだったかもしれない。

哀愁のマイナーメロディ + ダンスチューン、ギリギリで踏みとどまって踊り続ける人間たち

「ランバダ」に至っては石井明美のカヴァーも生まれ、あまりにも流行っていたので、当時はやや背を向けていた感もあるが、改めて聴き返してみると非常に優れた楽曲だということがわかる。

西欧人から見たエキゾチシズムというか、エマニエル夫人的なアヴァンチュール感も醸し出す切ない歌詞、艶っぽくハスキーに歌う女性ヴォーカル、そして股間をこすり合わせ踊るミュージックビデオ。

そういったプロデュースワークも世界的ヒットとなった要因だろうが、何といっても「哀愁のマイナーメロディ + ダンスチューン」、つまりこの曲は、心の痛みをステップに変える “ロックンロール” だってこと。これが効いている。

世界を動かす歌には、やはり人類普遍の法則が入っている。悲しみを悲しいと表現したところで人の心に届くわけがない。

バブル期の代名詞的存在として記号化され、手垢にまみれ、消費され尽くした「ランバダ」。だが、イメージをフラットにして聴いてみると、ギリギリのところで踏みとどまりながら踊り続ける人間の姿が見えてくる。ふた回り以上もの歳月を経た今だからこそ気づける「ランバダ」の本質。見落としていたメッセージにも気づいたりして、そんな視点で音楽を楽しんでみるのも悪くない。

追記:
カオマの女性ヴォーカル、ロアラ・ブラスは2017年の1月に殺害された。窃盗目的でブラスさんの自宅に押し入った男3人が、気絶した彼女を車の中に入れて火をつけたという。故郷ブラジルのリオデジャネイロ近郊で焼死体が見つかったようだ。なんともやりきれない事件だが、心よりご冥福をお祈りする。

※2017年2月19日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 太田秀樹