社説(12/16):高校野球の故障防止策/総合的な取り組みが必要だ

©株式会社河北新報社

 日本高野連は投手の故障防止のため、来春開催の第92回選抜大会を含む春季大会から「1人の1週間の総投球数を500球以内」とする投球数制限などの実施を決めた。決定したこと自体は評価できるが、あくまで第一歩。投球数制限自体のさらなる見直しや、併せて打ち出された防止策も含めた総合的施策の着実な推進が求められる。

 今回の故障防止策は、高野連が今春設置した有識者会議が4回の会合を経て答申をまとめ、高野連の理事会が了承したものだ。

 投球数制限を「1週間で500球以内」とする根拠について、有識者会議の議論などを見ると、1995年に日本臨床スポーツ医学会がまとめた「青少年の野球障害に関する提言」に基づいている。

 今回の決定を過去の例に当てはめた場合、昨年夏の甲子園で準優勝した金足農(秋田)の吉田輝星投手(現プロ野球日本ハム)は、決勝で途中降板するまで6試合で881球を投げたが、準決勝の途中で「1週間500球」に達していたことになる。

 必ずしも、毎大会で該当者が出るとは言えないレベルでの制限で、実効性を疑問視する声があるのも事実だ。

 提言では同時に、高校生の投球数は「1日100球以内とすることが望ましい」とも言及していた。ここまで踏み込めば、1試合を1投手が投げ切ることは、コールドゲーム以外かなり難しくなり、高校野球自体を大きく変える。

 日本ではこれまで、高校生段階で投球数と故障発生に関する本格的な調査資料がないという。このため、まずは「3年間の試行期間」として、より現場に抵抗感の少ない形で、まずは数字を示すことを優先したようにも見える。

 有識者会議の答申を受けた高野連の決定では、このほか、「3連戦の回避」「3年後の見直しに向けたデータ収集」「健康調査票の活用」も盛り込まれた。

 また、アマチュア球界全体の取り組みとして(1)「野球手帳」の普及、推進(2)学童、中学段階の試合数精選とシーズンオフ導入(3)障害早期発見のための検診システム導入(4)地域の関係団体による連絡協議会設立(5)指導者ライセンス制導入-がうたわれた。

 故障防止策として、投球数制限がクローズアップされたが、あくまで公式戦に限られ、対症療法的な側面もある。

 むしろ、個人の野球歴や故障歴が各段階で共有できる野球手帳の普及や、指導者に一定の知識やスキルを求めるライセンス制導入など、アマ球界全体での取り組みの方が、より多くの選手を対象とすることは間違いない。

 科学的検証に向けたデータ収集や、3連戦回避にとどまらない余裕のある大会日程の編成なども含め、児童期からの総合的な施策を、関係団体が連携しながら着実に推進していくことを期待したい。