「怏」も「快」も

 見た目は似ていて、意味はまるで違う。「快」によく似た「怏(おう)」という字は、うっとうしいことを指す。怏々として楽しまず、などと言う▲夜ごと続けば、年忘れの会食も「快」から「怏」へと変わるものだろう。近頃は、はなから「怏々として楽しまず」の人が大多数らしい。地域情報サイト「Jタウンネット」の最近のアンケートでは、職場の忘年会に「行きたくない」人は83%を超えた▲寄せられた意見に「業務時間外に気を遣ってまで飲みたくない」「お金を払って時間を無駄にする」「上司の無駄話を聞きたくない」とある。無駄を省け、と教え込まれる人から見れば、忘年会こそが無駄…かもしれない▲どうすれば参加しますか? 回答は「お酌なし」「宴会芸なし」「セクハラ発言なし」「1次会のみ」といろいろ条件が付くが、無理はよそうという声もある。「行きたい人が行けばいい。強制することではない」▲不要論もある。「行きたくない若手と飲んで上司も何が楽しいの?」。当方の経験をいくらか言えば、いつもは話す機会もない先輩、上司と、気が付けば話し込んでいたときもある。こういう場を無駄と言うべきかどうか▲強制力なし、条件あり。年忘れの催しの流儀も変わっているらしいが、時として、怏々とするその先で「快」と出合う妙味もある。(徹)

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