ちょっぴり怖い「雲仙地獄ナイト」ツアー商品化へ着々

ちょうちんを手に伊藤さん(右)の話を楽しむ参加者=雲仙市、旧八万地獄

 長崎県雲仙市の雲仙温泉街にある雲仙地獄に残る妖怪伝説や、ちょっぴり怖い昔話をプロの語り手とともに楽しみながら歩く「雲仙地獄ナイトツアー」づくりが進んでいる。13日夜、関係者20人がモニターツアーをした。
 同温泉街には、大叫喚地獄やお糸地獄、清七地獄など大小さまざまな約30地獄があり、その名の由来となった数々の哀史や伝説も多く残る。数年前から観光ガイドによるナイトツアーを続け、評判は上々。さらに魅力を高めようと、同温泉観光協会とJTB長崎支店などが協力して、プロの語り手が同行するツアーの商品化に乗り出した。
 モニターツアーには、同温泉観光協会や地元住民、フリーライターなどが参加。一行はちょうちんの明かりを頼りに、細く暗い道を恐る恐る歩く。一つ目のスポットに到着したころ、どこからともなく鐘の音が響き、夜闇の中から着物姿の女性が姿を現す。語り手の伊藤瑞さん(49)だ。
 伊藤さんは話術のプロ集団「話芸写」長崎代表で、大村市を中心にナレーターや講師として活躍する。不義理の末に夫を殺害したお糸の話やキリシタン弾圧で殉教した清七の伝説、かっぱの手にまつわる昔話-。もの悲しくも、ときに激しく強弱を付けて語る伊藤さんの話術に、参加者は息をのみながら引き込まれた。
 全行程約1時間、1キロ程度のツアーを終えた参加者は意見交換。「外でプロの話術に触れたのは新鮮だった」「地熱を感じる仕掛けがあってもいい」など感想や課題を話し合った。事務局は意見を反映させながら今後も実証実験を重ねる方針で「雲仙の新たな夜の観光資源発掘に向け、来春の商品化を目指したい」と意気込む。

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