ローソン、KDDIとの提携で描く「次世代型コンビニ」の理想像

コンビニ大手のローソンが12月16日に発表した、KDDIとの資本業務提携。KDDIの「au WALLET ポイント」が、ロイヤリティ マーケティングの運営する「Ponta ポイント」に今後統一されることになりました。

しかし、利用者にとって気になるのは、今回の提携によってコンビニサービス自体にどのような影響があるのかという点でしょう。発表当日に開かれた記者発表会の内容から、両社が目指す「次世代型コンビニ」の姿を探ります。


食品ロスの低減につながる?

au IDとPonta会員IDの連携により実現する、国内最大級という1億超の会員基盤。これをもとに、ローソンとKDDIはパーソナライズを軸としたデータマーケティング施策を実施予定で、「次世代型コンビニサービス」を提供するとしています。

KDDIの高橋誠社長は、ローソンの持つリアル店舗の在庫情報などと、KDDIが持つ「本人確認情報」「ロケーション関連情報」「ネット消費情報」と組み合わせることで、「新しい体験価値」を生み出す、と構想を語ります。

たとえば、エリア動態情報、在庫情報などを使い、「今、ケーキを買うとPontaポイント○○倍」といった情報を発信。「お客さまと店舗の“今”にマッチングすることができます。食品ロスの低減にもつながってくる」(高橋社長)。

両社が描く「次世代型コンビニ」の展開

また、モバイルオーダーの導入や、無人の受け取り機などにより、「ストレスフリーなコンビニができる。労働人口の減少への対応とお客さま体験の向上が両立する」(同)と展望します。

さらに、健康維持の社会的ニーズの高まりに対しても、活動量計や購買・食事データを組み合わせることで、タンパク質が不足しているユーザーに豆乳を勧めたり、1万歩あるいたユーザーに栄養ドリンクのクーポンを付与する、といったことが考えられるといいます。

認証技術で無人販売も可能に?

一方、ローソンの竹増貞信社長は、今回の提携により「あらゆるものが複合的に、3次元的にからみ合う中で、ローソンのリアルとデジタルの融合が、お客さまから見て『いいね』と言われるものを今後も追求したい」と語ります。

コンビニをめぐる課題に関して、同社はすでに横浜で夜間は“無人化”する店舗の実証実験をしていますが、年齢確認が必要なものは販売できない状態でした。しかし、KDDIの認証技術などを活用することで、販売が可能になる可能性があるようです。

「お酒やタバコが今より便利で簡単に、しっかり年齢確認できる。いろんな認証方法で年齢確認できるのではないか。無人であっても、必要な時に販売できるようになるのではないか」(竹増社長)

記者会見に臨んだローソンの竹増社長(中央)とKDDIの高橋社長(右から2人目)

「ヘルスケアローソン」では一般医薬品を扱っていますが、登録販売者が営業時間の半分はいないと認証が取れません。こうした課題についても「デジタルを使って解決できないか」と考えているといいます。

「ラストワンマイルがローソンの積年の課題。家まで行かずにお店を起点にして、買い物をサポートしているが、KDDIのデジタル技術やノウハウ、通信の技術が生きてくる。やりたいことはたくさんある」(同)

ほかにも、コンビニ来店者向けのサブスクリプション(定額課金)型サービスなど、新サービスの開発も発表されましたが、現時点で決定している事項はないとしています。

ドコモとの資本提携は継続

今回の提携で、KDDIはローソンの発行済み株式総数の2.1%にあたる、普通株式211万株を市場買付で取得予定。また、ローソンの親会社である三菱商事からは、Pontaを運営するロイヤリティ マーケティングの発行済み株式を20%取得します。

ローソンはNTTドコモとも資本提携をしていますが、他のスマホ決済の取り扱いをやめる予定はないといいます。「今後も『d払い』も継続します。PayPayもしかり。Origamiも当初から取り組んでいる。ローソンの決済手段を制限するものでは一切ない」(竹増社長)

会員基盤は1億超の規模に

モバイル決済の「au PAY」はポイント保有会員数が2,800万超、モバイル口座数を2,200万超を抱えています。一方、共通ポイント「Ponta」は会員数9,200万超。KDDIの高橋社長は今回の提携について「なんとかpayという決済サービスは各社が力を入れている。彼らがやっているものの大きな対抗軸になるのは間違いない」としています。

2020年度内の開始を予定しているという「次世代型コンビニ」サービス。構想をどこまで現実のものにできるかが、競合との差を縮めるカギとなりそうです。

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