『THE UPSIDE/最強のふたり』 何もかも正反対の男二人が、垣根を越え友情を育む

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 恐らく今年のアカデミー賞受賞作品『グリーンブック』にも影響を与えたであろうフランス映画『最強のふたり』(2011年)のハリウッド・リメイクだ。オリジナル版は日本でも、『アメリ』を抜いてフランス映画史上最大のヒット作となっている。

 事故で全身麻痺の車いす生活を送る大富豪と、スラム街出身で前科のある黒人。何もかも正反対の二人が、雇い主と介護人という垣根を越えて友情を育む過程を描く笑いと感動の実話だ。

 オリジナル版の肝である、障害に対して同情したり特別扱いをしないことで芽生える友情や、お互いを必要とし合う関係性、スピード違反でパトカーに追われる冒頭から面接での出会いに戻る構成など、かなり忠実なリメイクといえる。その上で、黒人を家族からも愛想を尽かされる弱い人間へとアレンジする分かりやすさや、一歩踏み込んだ後半の展開など、ハリウッド的にブラッシュアップされている。とりわけ、ニコール・キッドマン演じる秘書が担う新たな役割は、オリジナルにはない絶妙の効果を生んでいる。

 その分、リメイクという点を差し引いても既視感に満ちた作品であることは否めないわけだが、後出しジャンケンのメリットは最大限に生かされ、ハリウッドの万人受けするスキルの高さを思い知らされる。オリジナル版を観ていてももちろん楽しめるけれど、観逃した人は必見である。★★★★☆(外山真也)

監督:ニール・バーガー

出演:ケヴィン・ハート、ブライアン・クランストン、ニコール・キッドマン

12月20日(金)から全国公開

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