河北春秋(12/18):ユネスコは途上国で「世界寺子屋運動」を展…

©株式会社河北新報社

 ユネスコは途上国で「世界寺子屋運動」を展開している。貧しくて学校に通えない子どもがいる。大人になっても仕事がない。そんな貧困の負の連鎖を断ち切ろうという識字教育運動だ▼運動のモデルは江戸時代の日本にあった寺子屋。身分、性別に関係なく読み書きを教える場として寺に設けられ、庶民の識字率を高めた▼寺子屋をルーツにする日本の教育制度が揺れている。文部科学省が来年度開始の大学入学共通テストで国語と数学への記述式問題導入を見送ると発表した。現場の混乱を考えれば見送りは当然だろう。理由に採点ミスなどの課題解決が難しいことを挙げるが、それは最初から予測できた問題ではなかったか▼一方で共通テストと密接に関係する新学習指導要領の国語教育にも懸念の声がある。全国の高校で2022年度から実施。実用性重視で文学を学ぶ機会が減るとみられ、専門家は「多様な価値観がある文学の軽視」と批判する▼明治政府の教育顧問の米国人は寺子屋を残すべきだと主張した。元内閣府事務次官の松元崇さんは著作で、寺子屋が一人一人の個性を伸ばす米国の教育に通じる点があったためと推測する。寺子屋は多様性に富み、おおらかだったという。文科省の方々も教育の原点を見直してみてはいかがだろう。(2019.12.18)