<隠れた名盤> Various Artists『オフコース・クラシックス』 原曲の良さと、歌い手の持ち味の絶妙なバランス

Various Artists『オフコース・クラシックス』

 オフコースの楽曲を、クラシックのアレンジで7人のボーカリストがカバーするという企画盤。インストの『愛の唄』を含めた全8曲で3000円は割高に見えるが、1曲ごとに、多くの演奏者を調整した上での制作で、何より一聴しただけで分かる上質感ゆえに誰もが納得するだろう。

 全曲を聴いて、原曲の良さ、歌い手の持ち味、そしてクラシカルな音色が、主張しすぎず、絶妙なバランスで支え合っていることに感心した。例えば、上白石萌音の『さよなら』は、この曲、この演奏にして、彼女の繊細な声がいっそう映えるし、個性の強い根本要が歌う『Yes-No』でさえ、スターダスト☆レビューとオフコースを取り持ったような、程良い疾走感があるのだ。これも、多種多様のサントラを手がけてきた服部隆之のさりげない凄さだろう。

 最もドラマティックなのは、佐藤竹善の『生まれ来る子供たちのために』だろうか。元々、組曲のような構成の曲だが、穏やかな前半から力強く響く後半まで、歌唱も演奏も大きく広がっていくのが見事。

 また、平原綾香の『言葉にできない』も、彼女が05年にカバーした際よりも、説得力が増していて成長を感じさせ、今回の編曲で更に格調高く変化している。他に、ソン・シギョン、Ms.OOJA、さかいゆうが参加しており、聴き手のこちらまでEQが高くなった気分になる(笑)。まさに本物ならではの効能だろう。本作を聴けば、これまで以上に細やかな気配りにも気づくようになるはず。

(ユニバーサル・3000円+税)=臼井孝

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