後悔などあろうはずが…

 新語・流行語大賞の年間大賞に「ワンチーム」、世相を1字で表す「今年の漢字」は「令」と、この1年を表す言葉があれこれ発表された。心に染みた言葉として、米大リーグなどで活躍したイチローさんが引退した時の「後悔などあろうはずがありません」を挙げる人も多いだろう▲数々の記録を打ち立てたが、振るわない時もあった。大リーグ3千本安打まであと2本に迫って、凡退が11打席続いたこともある。苦しむ姿もありのままに見せ、挑み続けた人だから言える「悔いなし」に違いない▲それとは逆に、日本のトップは「悔やんでばかり」だろうか。最近の世論調査では、安倍晋三内閣の不支持率は43%で「支持」をわずかに上回った▲「桜を見る会」の疑惑について、安倍首相の説明が足りないと感じる人は8割に上る。閣僚が相次いで辞任したりと、今の改造内閣は9月に発足してから苦境に立ち続けるが、ありのままに事の次第を語るそぶりはうかがえない▲世論調査では、長期政権の緩みは「あると思う」と多くが答えた。批判をかわし、静まるのを待つ。そんな手並みは見抜かれている▲悔い改めるとすれば、「かわす」のではなく「語る」しかあるまい。いずれやってくる引き際で、イチローさんと同じことを言う首相の姿が、今は思い浮かばない。(徹)

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