スーパースターが帰ってきた プロ野球西武へ復帰の松坂大輔投手

西武の入団会見終了後、渡辺GM(左)に帽子をかぶせてもらう松坂大輔投手=12月11日、東京都内のホテル

 プロ野球の西武にスーパースターが帰ってきた。中日を退団した松坂大輔投手の西武への14年ぶり復帰が決定した。

 “平成の怪物”が慣れ親しんだチームで令和の時代にどんな投球を見せるのか。担当記者として登板が待ち切れない思いだ。

 松坂が神奈川・横浜高で甲子園春夏連覇を果たした1998年、筆者は当時小学生。野球に強く興味を持ち始めて間もない頃で、松坂は自分にとってのスター選手だ。

 大阪・PL学園高との熱戦や、決勝戦のノーヒットノーランなど、名場面は今でも脳裏に焼き付いている。

 12月11日。その松坂が西武の入団会見に臨んだ。

 記者の仕事をしていると、多くの有名スポーツ選手に会うことができる。入社8年目で慣れも出てきたと思っていたが、いざ目の前に松坂が出てくると、感情が高ぶるのを強く感じた。

 会見での言葉の一つ一つにも引きつけられた。松坂といえば150キロを超える直球で打者をねじ伏せる投球が持ち味だった。

 だが近年はけがに苦しみ、球速も落ちた。「昔のイメージを持っていらっしゃる方もいると思うけど、球も遅くなったし、やりたくないと思っていたボールを動かす投球もしている。そうしていくことが、自分が生きていく道」ときっぱり言った。

 自らの衰えを認めながらも、まだプロの世界で結果を残してみせるとの強い意志を感じた。

 39歳。「僕自身も終わりというものがだんだん近づいている」と話したように、引退が頭にないことはないのだと思う。

 来年駄目なら、という考えもあるかもしれない。ただ、ファンの一人としては復活を期待せずにはいられない。

 本人も「期待されていない方の方が多いと思うけど、それを少しでも覆せるようにやっていきたい」と気合は十分だ。

 12球団でもトップと言える強力打線の援護もある。完璧な投球をせずとも日本、米国で磨いた投球術できっちり試合をつくっていけば、自然と勝ち星が積み重なる環境はある。復帰を待ちわびたファンの声援の後押しも力になるはずだ。

 来季は同じパ・リーグのロッテに「令和の怪物」と呼ばれる岩手・大船渡高の佐々木朗希投手が入団する。もし投げ合いが実現すれば、誰もが注目する一戦になるだろう。

 そのことを会見で問われた際、松坂は「若くて才能のある選手が入ってくるが、楽しみを形にできるかは僕次第。今はしっかりやって1軍のマウンドにいられるようにしないといけないと思っている」と冷静に語った。

 実績におごることなく、自分の立ち位置を見詰める姿勢が印象的だった。

 「最後はここなのかな」と西武で現役選手としての最終章に臨む。

 あと30勝としている日米通算200勝へも「自分自身が諦めることはしたくない。そういう気持ちでやっていると届くことはない。諦めずに200という数字を目指してやっていきたい」と力強く言った。

 野球への情熱は誰にも負けないのではないか。「やっぱり自分は野球が好き。野球が好きだという気持ちを表現するための場を与えてくれたライオンズに感謝している。今持っている気持ちを、本当に燃え尽きてやめるときまで持ち続けたい」と引き締まった表情で語った。

 その燃え尽きるときが、まだまだ先になることを願いつつ、復活へ向けた道のりの取材を進めていく。

秋友 翔大(あきとも・しょうだい)プロフィル

2012年共同通信入社。札幌支社での警察取材などを経てプロ野球担当に。阪神、中日、楽天を経て、19年から西武担当。大阪府出身。

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