手土産は人と人つなぐ〝潤滑油〟 秘書厳選の逸品紹介 編集長が込めた願い

「接待の手土産品評会」に参加した秘書から、商品の感想を取材する佐野桜子さん(右)=12月5日、東京都千代田区

 日本画が描かれた小さなチョコレートや、しっとりした生地のカステラ―。全国からよりすぐった菓子や酒、ご飯のお供になる珍味を紹介する情報サイト「接待の手土産」は、訪問時や自分へのご褒美探しに便利と人気を集める。編集長を務めるのは、飲食店検索サイトを運営するぐるなびの佐野桜子さん(42)。「言葉で伝えられない気持ちも込められて、人と人をつなぐ潤滑油になるのが手土産。もっと手軽に贈り合う習慣を作りたい」。こんな願いを込めて、日々情報探しに走り回っている。(共同通信=高口朝子)

 ▽秘書が厳選

 訪問時の手土産に迷う人は多い。相手が取引先や親戚など、礼儀が必要な場合はなおさらだ。そこで、秘書がお薦めする情報を集め紹介しようと考えた。「失敗が許されない厳しいビジネスの世界で培った知恵なら、いろんな人や場面に役立つはずです」

 約3万7千人が登録する秘書の性別や年齢は千差万別だ。国内外の大手から新興企業、国会議員や病院長の秘書など肩書もさまざま。彼らが推薦する商品を集めた品評会を年10回ほど開く。参加した秘書が厳選し、サイトでは常時約1000種を紹介する。

 ▽余韻も大事

 小さな頃から食いしん坊だった。外国の料理を紹介する本や、ねずみたちが大きなフライパンでカステラを作る絵本「ぐりとぐら」を見てはワクワクした。

 大学時代、フランスに短期留学した。ホームステイ先の母親が料理上手でほぼ毎晩、コース料理を出してくれた。地元に伝わる魚のスープや、パパの誕生日だけ登場したシャンパン…。他の外国人留学生も一緒に皆でおしゃべりしながら数時間かけて過ごした。「料理だけでなく余韻を楽しむということを学んだ」

 卒業後はアパレル会社に就職したが、忙しさで体調を崩した。「命の根幹に関わる」と食事の大切さを痛感。フランスでの経験も思い出し「料理だけでなく暮らしや文化も伝えたい」と、今の仕事に行き着いた。

 佐野さんがもう一つこだわるのは「生産者やメーカーを応援したい」との思いだ。気になる商品は自ら取材に出かけ、生産者から商品に込められた思いやストーリーを直接聞き出してサイトなどで紹介する。店や企業の個性や努力を、あえて他者の目線で伝えることが必要だと考えている。

「接待の手土産品評会」で、福島県会津若松市の和菓子メーカーから商品や包装の工夫を聞き取る佐野桜子さん(右)=12月5日、東京都千代田区

 福島県会津若松市の和菓子メーカーは「切る手間が面倒」と敬遠されていたようかんで、切るたびに断面の絵柄が変わる商品を開発し話題を呼んだ。広島市の製菓店は「地元の新たな名産を作りたい」と老舗の名に甘んじず魚介を使った新商品を作り、人気を集める。

 「背景を知れば自信を持って贈れるし、渡す時にも語りたくなって会話が広がるきっかけにもなるでしょう」と笑う。

 ▽幸せ広がれ

 プライベートの旅行で訪れた宮城県塩釜市のすし店では、マグロの角煮が軟らかくて感動した。店主に作り方を聞くと「魚に気づかれないように火を入れるんです」とユーモアの効いた答えが返ってきた。「丁寧な仕事や楽しい会話に出会うと、この仕事はやめられないと思う。ここの料理や商品がなぜ他と違うのか、というのを知りたくてたまらなくなるんです」

 日本の手土産は、包装紙やリボンの色や素材がきれいだ。包み方も細やかで美しいと外国人からも高評価で、手土産は日本の文化そのものだと感じている。

 「もらう側も贈る側もうれしく楽しい、というのが本当の贈り物。もっと幸せが広がればうれしい」

「接待の手土産」用に選んだ商品を手に持つ佐野桜子さん

 ぐるなび「接待の手土産」https://temiyage.gnavi.co.jp/

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