涼しくても熱中症、省エネ住宅で安全・快適に ―ユーザー版2019年夏季号より

 近年の異常気象ともいえる夏の暑さから患者数が増加し、その危険性が取りざたされるようになった「熱中症」。室内だからと安心していたら、何だか気分が悪くなった、という経験はないだろうか。梅雨の時期は、身体が暑さになれていないため、上手に汗をかくことができない。そのため、身体からの放熱量が少なくなり、熱中症になりやすくなる季節でもある。その対策として、リフォームや建て替えという手段がある。断熱や遮熱性能を高めることで、外の熱気が室内に入らず冷房効果も高い住まいが実現できる。

熱中症の発症確率、高齢者が7割

 熱中症は、4割強が住宅内で発生し、65歳以上の高齢者がそのうちの約7割を占める。これは、住宅の断熱性が低いため、室内の気温が高くなることに加え、「電気代がもったいない」と我慢して冷房を適切に使用しないとか、水分を取らないことなどによって起こる。

 今年の夏は、エルニーニョの影響で全国的に平年より低めの気温になることが見込まれてはいるが、それでも気温が高い日には体調不良に陥りやすくなりがち。高齢者や小さいお子さんだけでなく、日頃から体調管理には気を付けておきたい。

 夏に室温が上がるのは壁や屋根、窓からの熱の影響。その意味で、熱中症は住まいの遮熱がしっかりしていれば避けられる事故といえる。中でも、「開口部=窓」は、外から入ってくる熱全体の74%を占める。そのうちの65%が直射日光によるものだ。また、家具やフローリングの日焼けの要因は日差しからの紫外線。厚さ3㍉の単板ガラス窓の場合、何も対策を取らなければ太陽から降り注ぐ紫外線の約7割が室内に入る。

窓の外側での日射対策が有効

 特に、西向きの部屋は夏でも低い位置から差す西日が直撃し、部屋の温度を上昇させる。シェードなど窓の外側で日よけをすることで、部屋に入る日差しは4分の1に減らせる。さらに、LowーE金属膜タイプの複層ガラスを使った窓にすることで、より高い遮熱性能を発揮する。

 こうした機能を、住宅全体に広げたのが省エネルギー住宅だ。夏に、室内の温度が上がる最も大きな要因が、外部からの日射熱ということはすでに触れた。日射を遮蔽することで、室温の上昇を抑え冷房に必要なエネルギーを削減できることも。省エネ住宅とは、エネルギーの消費を抑えるだけではなく、冬場は室内の温かい空気を室外に逃がさず、逆に夏には室外の熱が室内に入らない住まいを指す。

 日射遮蔽に加え、断熱と気密が大きな要素となる。断熱とは、壁、床、屋根裏、窓などを通しての住宅の内外の熱の移動を少なくすること。基本的には、家全体を断熱材ですっぽり包み込むことで性能は高まる。ちなみに、住宅の断熱性能は「外皮平均熱貫流率」(UA値)で示される。

 住宅の外皮(床、壁、窓など外気と接している各部位)から逃げる熱損失を合計し、外皮面積で割って求める。数値が小さいほど省エネ性能が優れているため、住宅展示場のモデルハウスやカタログで確認してみるのもいい。気密性能の向上も、隙間からの空気の出入りを抑えるのが狙い。ただ、高い気密性は一方で空気環境の悪化も招くので、必要な換気量を確保しつつ過剰な空気の移動を減らすことが重要だ。

 さらに、省エネ住宅を一歩進めた最先端の戸建住宅が、スマートハウスやZEHだろう。家電製品や給湯機器をネットワーク化し、表示機能と制御機能を持つ「HEMS」(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を搭載。家庭の省エネルギーを促進する、エネルギー使用の〝見える化〟など、今後の新たなツールとして期待されており、モデルハウスなどで確認して欲しい。

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