【英総選挙2019】 現職が落選すると……議席を失うってどんな気分?

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ジェニファー・メイヤーハンス、BBCニュース・オンライン

イギリス総選挙の結果は、国中の下院議員にとって予想外の勝利や衝撃的敗北をもたらした。様々な選挙で、現職でありながら落選を経験した元下院議員たちが、議席を失うとはどんな気分なのか教えてくれた。

「愕然とした」

イングランド北部ベリー・ノースで105票差で落選した数時間後、ジェイムズ・フリス前下院議員(労働党)は、この敗北が自分と家族にどう影響するのか、その「インパクトの全容」を語るには「時期尚早」とした一方で、数週間にわたる激しい選挙戦が終わったことで、「一定の解放感」を感じていると述べた。

フリス氏は、総選挙で野党・労働党が失った60議席のひとつで出馬していた。ベリー・ノース選挙区は、与党・保守党が奪った労働党支持基盤の54議席の1つでもあった。とはいえ、ベリー・ノースの場合、2017年総選挙で保守党のデイヴィッド・ナトール氏からフリス氏が議席を奪ったものだと思えば、むしろ保守党が奪還したのだと言える。

「まだ事態を受け入れようとしているところだ」と、かつてロックバンドのリード・ボーカルだったフリス氏は言う。

悲嘆の度合いで言うと、『愕然(がくぜん)とした段階』にある。(中略)集計を2度やり直して、2度とも結果が変わった。3度目になって集計結果を認め、敵陣を祝福して帰宅した」

「その後も眠らず起きていて、翌朝に子供たちに説明した。息子の1人はすごく落ち込んだけど、幼い2人はあまり理解していなかった」

11月6日の議会解散時には、激戦区で自分が敗れることは「あり得る」と理解していた。その一方で、「勝つぎりぎり寸前で負けた」ことの衝撃を味わっているという。

今後は「党の再建」に関わりたいとしているが、まずは「休みを取る資格を十分得た」ので、クリスマスのため休憩するつもりだという。

「台所ですすり泣く」

ベン・ハウレット氏(33)は、2015年総選挙で下院議員(バース選出)に当選したが、2017年総選挙で議席を失った。「開票後、自宅に戻って洗濯機から洗濯物を取り出している時に、メイ氏から電話で残念だと告げられた。ちょっとシュールな状況だった」。

この時の敗北は、「近親者を亡くすような感覚に少し似ている」という。

「議員の仕事は、月~金の9時~5時だけでは終わらない。基本的に、自分の生活そのものなんです」とハウレット氏は言う。

「共に働く人たちは家族同然になる。自分のチームがいるし、何百人もの人を支え続ける。その人たちを、もう助けられなくなる。いきなり。個別の移民案件に協力しようとしていたので、それを後任に託さなくてはならなかった」

ハウレット氏は、開票終了までに興奮して疲れ果て、アドレナリンとコーヒーにすがっていたという。

「家族と一緒に日曜の夕食に出かけた最中、月曜日に自分の選挙区事務所を閉じなくてはと、はたと気づいた」

「ほかのみんなは仕事に戻るのに、自分は1人になる。1人になるなんて、何カ月ぶり、あるいは何年ぶりのことなのに。実際にも、気持ち的にも、1人きりになる。台所で1人、すすり泣いたのを覚えている。たくさんの支えが必要だし、大勢の支えが必要になります」

「誰かが死んだわけじゃない

国民健康サービス(NHS)の医師タニア・マサイアス氏は、2015年から2017年まで、トゥイッケナム選出の下院議員(保守党)を務めた。

「議席を失うとがっかりするが、病院あるいは紛争地帯での最悪の夜に比べれば、それほど悪くはない。誰かが死んだわけじゃない(中略)最初はそういう言い方はしなかった。周囲の気持ちを軽んじるみたいだと思ったので。けれども、医者から政治家になった友人たちは理解してくれた」

現在は眼科医として働くマサイアス氏は、保守党支持の運動を継続している。チャリティ団体「フリーダム・フロム・トーチャー」のボランティア医師として、コソヴォやボスニア・ヘルツェゴビナ、シエラレオネで、選挙に初めて立候補する人のためのワークショップを率いてきた。

「私は自分の全力を尽くした。全ての票が欲しかったけど、負けても『自分は民主主義の一部だ』と思える。そのことを、本当に本当に誇りに思う。有権者がそれぞれの意思を示し、暴力はなかった。だから私は嬉しい」

「(2016年に地元選挙区で有権者との対話集会で殺害された)ジョー・コックス下院議員(当時)の一件で、あらゆることが客観化された。人と話をすること、正直に話をすることは、本当に価値のある大事なこと。見ず知らずの人の玄関をノックして、自分の信念についてその人と話し合えるという、この基本的なことが、続くようにしなくてはならない」

「自分のメッセージを伝えられて、有権者とのコミュニケーションに昼夜を問わず1分1分を使うことができたのであれば、喜ぶべきだ」

世間の目の前でクビになる

2010年から2015年まで、自由民主党の下院議員(ノリッチ・サウス選出)を務めたサイモン・ライト氏は、「落選とは、世間の目の前でクビになることだ、これほど公然と解雇されるなどほかにないと、前に聞いたことがある。逃げ隠れできないと」確かにその通りだ」と話す。

「開票結果が出る頃には、状況はだいたい分かっていた。なので結果発表の時点では、避けがたい事態を受け入れるという感じの方が強かった」

「選挙に出るなら勝つつもりで戦う。それだけに、落選はいつだってひどい衝撃だしショックです。けれども、選挙から数週間の間、前向きな言葉をかけられて元気を取り戻した。自分の元選挙区の人たちだけでなく、ライバルも声をかけてくれた」

ライト氏は、家族と死別した子供を支援するチャリティー団体「ネルソンズ・ジャーニー」の最高経営責任者(CEO)という新たな仕事を、数週間以内に見つけられたのが「非常に幸運」だったと話す。

今年4月には、妻アナ・ソープ氏と結婚。友人1000人が式当日の朝、ノリッチのキャットンパークで開催されたパーク・ラン(公園で走るイベント)に参加した。

「色々なことが重なり、本当にやってみたいと思える、熱意と情熱を注げる新しい仕事も見つけられた。(中略)下院議員の仕事にかかる時間や気持ちの熱量は、相当なものだし、様々な方向へと引っ張られる。今では家族や友人、趣味のための時間が増えたし、ランニング仲間が生活の大事な一部になった」

「議会を離れても、人生は続きます。落選が未来を決定してしまうなんて、そんな必要はありません」

「落選するだろうと分かっていた」

マシュー・グリーン氏は、2001年から2005年までの間、中西部ラドロー選出の下院議員(自由民主党)だった。

「私は、投開票前の週末から、落選するだろうと分かっていた。どれだけの票が集められるか計算したので」と、グリーン氏は言う。

「ただ、選挙活動は最後まで続けたかったので、選対チームの誰にも伝えなかった。(中略)負けると知りながら誰にも言えないという、シュールな数日間を過ごしていた。それが現実になった時は心が張り裂けそうだった。突然の解雇や会社の倒産に匹敵することだと思う」

さらに、「将来への見通しが全然立たない状況なのに、ローンは残ったし、職を失ったことで事務所をたたみ、選挙チームの人たちを解雇することになった。嬉しいことではありません」とグリーン氏は述べた。

建設コンサル会社を「ほとんどたまたま」立ち上げ、今も経営するグリーン氏は、会社設立前に複数の仕事に応募したという。

(英語記事 What's it like to lose your seat as an MP?