42歳独身、貯金800万円「退職金もボーナスもない会社に不安」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、勤務先にボーナスも退職金もなく、老後資金が不安だという42歳の独身女性。預貯金だけの資産に限界を感じ、運用も検討したいといいますが……。FPの横山光昭氏がお答えします。

ボーナスと退職金が出ない会社に勤めているので、老後資金が心配です。

40代の単身女性です。大学卒業後よりずっと厚生年金に加入できる働き方はしてきましたが、途中2度ほど転職をしています。今の会社は業務内容が気に入り、7年勤めていますが、退職金制度がありません。ボーナスの支給もないので、臨時収入がなく、今のままで老後資金を貯めることができるのだろうかと不安になってしまいます。

しかも、今後給料が減る見込みも出てきました。転職をしようと新たな職場を探してみても自分が希望するような給料、希望するような待遇の会社はなかなかなく、このままこの会社で頑張るしかないのかなと思っています。

一人なので、先のことを考えてある程度貯金を意識した暮らしをしてみましたが、貯金だけで持っていることへの限界も感じています。運用を始めようかとも考えているので、老後資金作りに向けたお金の持ち方などを教えていただけたらと思います。

<相談者プロフィール>

・女性、42歳、未婚

・職業:会社員

・毎月の手取り金額:28.3万円

・年間の手取りボーナス額:なし

・普通預金:300万円

・定期預金:500万円

【支出の内訳(23万円)】

・住居費(家賃):7.5万円

・食費:5.5万円

・水道光熱費:1.8万円

・生命保険料:0.4万円

・通信費:1.2万円

・交通費:0.5万円

・日用品代:0.4万円

・医療費:0.2万円

・趣味・娯楽費:2.5万円

・被服費:0.3万円

・交際費:1万円

・その他:1.7万円


横山:ご相談ありがとうございます。老後資金が作れるかどうか心配なのですね。

老後の暮らしは、年金などの収入がいくら見込めるのか、生活費がいくら必要なのかにより、必要な金額が変わります。まずは自分に必要な老後資金がいくらなのかを考えてみるとよいでしょう。

老後にいくら必要で、いくら不足するのかを試算する

「ボーナスがない」「退職金がない」と老後資金について悲観していても、状況は改善されないですよね。老後資金はコツコツと作り上げることが大切です。ですが、目標額をいくらにするとよいのかは、ちょっと計算してみないとわかりません。

相談者さんはまず、「年金定期便」または「ねんきんネット」を見て、ご自分がいくら程度の年金をもらえそうなのか目安を把握しましょう。詳細な金額は今は出ませんので、将来の見込み額などでよいと思います。対して、自分が今、1ヵ月暮らすためにいくらが必要なのかを把握し、今の生活を続けるのならいくら不足するのかを計算してみましょう。

80歳を超えると認知症などになる割合が増えると言われ、老後は支出が減る傾向にあります。ですが、今は老後を元気に過ごせる人も多く、少なくともそれまでの間は、これまで通りに消費活動をする人も多いのではないでしょうか。そう考えると、自然に支出が減るということは期待できないかもしれません。

もし、不足額が意外と多いと感じるのなら、今の暮らし方から切り捨てられる支出はどれかを見つけ、支出を減らしていくとよいでしょう。今活動している趣味や、今後のために取り組んでいる勉強などをやめるのではなく、契約内容を見直すと金額が下がりやすい固定費や、明らかに無駄遣いだなと思える部分を見直すだけで十分です。現状で言うと、通信費の契約や水道光熱費の使い方は見直しが可能だと思いますよ。

それを見直した後、支出と収入の差額がいくらになるか、差額は貯蓄で補填するのか、働いて補填するのかを考えてみるとよいでしょう。働かないとなれば、全額を貯金で賄えるように準備しなくてはいけません。

すぐに使うお金は「預貯金」、長期的に使わないお金は「投資」

相談者さんもおっしゃるように、今の800万円ほどの貯金をそのまま預貯金で持っているのは少しもったいないですね。現状のやりくりでも毎月5万円ほどの余剰金が出ているのですから、これはすべて投資に回してもよいと思います。

ご興味があるようでしたら、株価の指標に連動することを目指す「インデックス型の投資信託」に定期的に積み立てると、リスクが分散されて、よりローリスクで、かつ手数料などのコストを抑えて運用できます。

値動きが大きくないので、お金の増え方もはじめの方は少ないと感じるでしょうし、地味な投資の仕方ではありますが、時間を味方につけ、長期間継続していくと、複利の力でお金を増やすことができます。投資なので増えることもあれば減ることもありますが、経済成長と共に成長していくものですので、長期的にみると預貯金で持つよりずっと増えていたという結果になると思いますよ。

投資か、貯金かと極端に考えるのではなく、すぐに使う予定のあるお金は預貯金で、長期的に使わないお金は投資で持つと考えてもよいですね。今から始めると、最初に考えた「自分にとって必要な老後資金」を余裕をもって作ることができると思います。

退職金がないと悲観せずに、まずは国の制度を使って長期投資を

投資を始めようと思うと、証券口座をどこに開くか、どのように始めようかと迷うことが多いかと思います。お仕事をされていて忙しい方は、ネット証券が便利だと思いますよ。今は投資商品も充実していますし、セキュリティも心配なく、取引も簡単です。

そこで、老後資金であれば60歳まで引き出すことができない「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と、いつでも引き出すことができる「つみたてNISA」の口座も申し込んでおきましょう。

iDeCoは、毎月5000円から掛けることができ、厚生年金に加入している会社員であれば、企業年金の加入状況により1万2000円~2万3000円が毎月の上限となります。掛け金が全額所得控除となり、運用益も非課税と税制面で優遇され、受取時も税控除されます。掛け金は毎月の他、ボーナスを利用して年2回、または年1回などの支払い方もできますが、それは掛け金を払える資格、つまり“公的年金制度の掛け金を払っている”という条件をクリアしている期間だけ可能です。

税優遇を考えるとメリットは高いのですが、私的年金制度の一つなので、今のところ60歳までは引き出せないため、老後までの間に「教育資金に充てたい」「マイホームの頭金に使いたい」ということはできません。

つみたてNISAは、定期的に積み立てることを条件としたNISA制度です。つみたてNISAが通常のNISAと異なる点は、年間の投資額の上限が40万円まで、非課税期間は20年間というところです。そして、投資できる商品も金融庁の基準をクリアした、リスクの少ない商品ばかりですので、はじめて投資をするという人にとっては間違ってリスクの高い商品を購入することがなく、始めやすいものだと思います。金額も、金融機関によっては100円からはじめることが可能です。

このように、国が投資に取り組みやすい制度を作っていますので、それらを利用して長期投資に挑戦してみてもよいと思います。退職金がないと悲観をせず、40代の今からはじめれば、現状で言うと17~18年間はiDeCoができますし、今後その上限年齢が上がる可能性もあります。つみたてNISAにおいては年齢の制限はないので、バランスを取りながら両方を始めてもよいと思いますよ。ぜひ、ご検討ください。

© 株式会社マネーフォワード