STARD製EVラリークロス車両のテスト継続。ラリー界、レース界から数多くのドライバーが参加

 2020年からWorldRX世界ラリークロス選手権の併催カテゴリーとして始動する完全電動ラリークロス車両による『Projekt E(プロジェクトE)』シリーズ。その車両製作と開発を進める技術企業STARDは、フォード・フィエスタRXスーパーカーをベースとしたフルEVマシンのテストを続けており、最新のテスト走行にはラリークロス界、ラリー界、そしてサーキット出身者など多くのドライバーが招かれた。

 2020年WorldRXのカレンダーで、欧州域内開催ラウンドでの併催が決まっているプロジェクトEシリーズに向け、デモカーの開発を進めているSTARD。10月にヘイデン・パッドンを招いたお披露目会でのシェイクダウンに続き、本拠を構えるオーストリア国内を中心に2020年5月の本格デビューに向け精力的な走行テストが進められている。

 今回、オーストリア・メルク近郊のラリークロス用トラックであるヴァチャウリンクでは、2日間のテストが実施され、デイ1、デイ2ともに各3名のドライバーが参加した。

 初日は2019年のWorldRXでEKSスポーツのアウディS1 EKSクワトロをドライブしたクリスチャン・サボーと、ERCヨーロッパ・ラリー選手権などで活躍する若手ドイツ人のマリアン・グリーベル、そしてノルウェー出身でユーロRXではスーパー1600クラスに出場したラース・クリスチャン・ロート・ロスランドがフルEV RXカーを初ドライブ。

 2日目はRX2インターナショナル・シリーズに参戦するウィリアム・ニルソンとマーカス・ホグランド、そしてイタリア出身の元GP2ドライバーで、WEC世界耐久選手権やル・マン24時間ではLMP1のアウディR18シリーズをドライブしたマルコ・ボナノミがステアリングを握った。

 初日トップバッターでEVラリークロス車両を体験したWorldRXドライバーのサボーは、その圧倒的な加速性能に驚愕したとの初インプレッションを語った。

オーストリア・メルク近郊のラリークロス用トラックであるヴァチャウリンクに、都合6名を招いてのテストが実施された
2019年のWorldRXでEKS SportのアウディS1 EKSクワトロをドライブしたクリスチャン・サボーも参加

「ゼロスタートのラウンチ性能は圧巻だったよ。思わず『ワオ!!』と言いたくなるくらい印象的だった」と語った2019年WorldRXランキング10位のサボー。

「スロットル操作は本当に忍耐強く、そして可能な限りスムースに行う必要がある。なぜなら、ペダルに触れた瞬間にすぐさまパワーが発揮されるからだ。ラフな操作は厳禁だけど、とても楽しかったし、ドライビングフィールはとても良かった」

「それにマシンの重心位置が非常に低いとも感じられた。車両重量自体は軽くないのでブレーキング時に注意が必要で、止めること自体に多少の難しさはあるけれど、それでも良い感触だったよ」

 また、ERCを中心にR2やR5規定の最新ラリーカーをドライブしてきたグリーベルも、次のように初体験の感想を語っている。

「これは僕にとってまったく初めてのラリークロス体験であり、このスポーツでの最初のラップだったんだ。正直に言うと、多分このマシンはこうした経験を積むのに最高のマシンのひとつだったんじゃないかと思うよ」

 元WRCドライバーのマンフレッド・ストール率いる技術集団STARDの手によって開発されたマシンは、彼らがWorldRXで走らせてきたフィエスタEvo.4のボディとシャシーをベースに、“REVelution”と呼ばれる電動パワートレインを搭載。150kWを発生する3モーターの構成で、総合出力は612馬力にも達する。

 このフィエスタREVelutionは、すでに車両お披露目以降の数週間でいくつかのイベントにも参加しデモンストレーションをこなしており、10月末のルーマニア首都ブカレストでのイベントに続き、12月初旬にはポーランド・ワルシャワ近郊で開催された第57回ポーランド・ラリー・スプリントにも参加し、ストール代表自身がステアリングを握っている。

マルコ・ボナノミは、2019年の鈴鹿10hでHonda Team MotulのNSX GT3もドライブしている
初体験のラリークロス、初体験のEVマシンと、初ものづくしのテストとなったマリアン・グリーベル(左)

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