70歳まで働くこと

 70歳まで働かなければならないのか…こうため息をつく中高年は最近少なくあるまい。政府は着々とその環境づくりを進めている▲安倍晋三首相肝いりの全世代型社会保障検討会議は「高齢者の経済基盤を充実させる」と強調している。「老後には2千万円の貯蓄が必要」という金融庁審議会の報告書が議論を呼んだことも記憶に新しい▲60歳で会社を定年退職した人が、趣味に打ち込んだり、ボランティア活動に励んだりするなど、悠々自適に第二の人生を送るというのは、今後はぜいたくな夢になっていくのだろうか▲仕事に生きがいを感じている人が、好きで働き続けるのであれば結構なことだ。しかし中には、生活のために若くない体にむち打たざるを得ない人がいるかもしれない。最低賃金に近い仕事を掛け持ちして▲少子高齢化が進み、人口に占める若い世代の割合がどんどん小さくなっていけば、社会保障の支え手を増やすため、年を取っても働ける人にはできる限り働いてもらいたいという理屈は分かる。理屈では▲ただし、それが自分のこととなれば、心情的に抵抗を覚える人は多数いるだろう。せめて、人手不足の穴埋めとしてではなく、安い労働力としてでもなく、豊かな人生経験が光る働き手として、高齢者が尊重される社会であれと願う。(泉)

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