行方不明者捜索 地域ぐるみで 電波発信機使い訓練

子機との距離や方向が表示された親機の画面

 認知症で徘徊(はいかい)するなどして行方が分からなくなった人を電波の発信機を使って捜索する訓練が18日、長崎県佐世保市野中町などで開かれた。周辺の自治会や介護施設の関係者、市職員ら約30人が参加。地域で協力して捜索する方法や課題を話し合った。電波の発信機を活用し、地域ぐるみで行方不明者の捜索を試みるのは全国でも珍しいという。

 町内で福祉施設を運営する「円」(藤田純平代表取締役)が、行方不明者を捜索するための方策を検討。山岳遭難者の捜索などで使う無線機器の開発を手掛ける個人事業主「A&I開発」(福岡県大野城市)に協力を依頼した。子機が発する電波を親機で検知。距離や方向から位置を割り出す仕組み。
 この日の訓練では、子機を持った行方不明者役の男性が、周辺を徘徊した。参加者は親機を持って高台に上がり、子機があるおおまかな場所を把握。その後3チームに分かれ、親機に表示される方向と距離を見ながら捜索。約30分後に発見した。
 参加者からは「思ったよりも早く見つけられた」「1キロの距離があっても反応があった」と驚きの声が上がった。一方で、「方向が定まらず、分かりにくかった」「何度も訓練をして慣れないといけない」などの意見もあった。
 A&I開発の芦塚哲也代表によると、行方不明者の捜索にこの方法を活用している例は県内外で20カ所ほどある。だが、いずれも福祉施設単独の取り組みという。芦塚代表は「高台の施設にあらかじめ親機を置いてもらい、捜索の際に協力を依頼するなど、地域でコミュニケーションを取ることが大切だ」と話す。
 藤田代表取締役は「地域で協力できる仕組みをつくるため、今後も協議したい。佐世保から、新しい捜索の方法を全国に発信したい」と意気込みを語った。

電波の発信機を使い、行方不明者役(右)を発見した参加者=佐世保市内

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