三菱重工 香焼工場売却検討 長船幹部ら「造船の灯 消さない」 地域貢献継続表明

香焼工場での仕事を終え、車やバイクで帰宅する従業員ら=長崎市香焼町

 「長崎経済への影響は」「造船の灯が消えるわけではない」-。三菱重工業が長崎造船所香焼工場(長崎市)を大島造船所(西海市)に売却する検討を始めたと正式発表した18日、三菱重工創業の地での事業縮小の決断に対し、関係者らの間にはさまざまな思いが広がった。

 同日午前、長崎市役所で田上富久市長と向かい合った長崎造船所幹部らは「造船の灯は消さない」と強調した。大島造船所との協議が一括売却でまとまった場合、三菱重工の長崎での造船拠点は立神工場の一カ所になる。造船業は本県の基幹産業で、地域経済との結び付きが強い。売却の影響を不安視する声を払拭(ふっしょく)するかのように幹部らは、立神工場を増強し、他社の追従を許さないレベルを目指す決意を語り、地域に貢献し続ける姿勢を示した。
 報道陣の取材に応じた田上市長は「変化を冷静に受け止め、できるだけプラス面を大きくできるように取り組んでいきたい」と前向きに語った。協議相手が大島造船所であることには「地元への貢献を考えてくれた」と感謝した。
 長崎商工会議所の宮脇雅俊会頭は、立神工場での造船事業強化など三菱重工の計画を挙げ「今後とも長崎地域社会の発展にご尽力いただきたい」とコメント。三菱重工グループ労連長崎地区本部の塩田淑文書記長は、造船業を巡る厳しい状況を踏まえ「仕事量の減少に伴うものだと判断している。従業員とパートナー企業が引き続き、長崎で働くことができるよう、組合として要請していく」と語った。
 一方、香焼工場の従業員らは今後の行方に気をもむ。50代の男性は「船の受注がなく、ずっと不安を感じていた。今後、雇用や収入はどうなるのか」とため息をつく。あるパートナー企業は「仕事量は増えるかもしれないが(大島造船所が)子飼いの関連会社を連れてきて仕事が回ってこないのではないか」と不安を口にし、県外の仕事量を増やし「“脱三菱”を強めていく」と明かす。
 従業員らが通う市内の飲食店は「長崎は造船、三菱を盛り立てていかないと立ちゆかない。今後、長崎の経済が冷え込めば、店の経営ももっと厳しくなるのではと不安」と話した。

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