「悪影響 知ることが対策に」 五島生息の外来生物

五島市内に生息する外来生物の実態や対策について考えた学習会=五島市武家屋敷1丁目、「SERENDIP HOTEL GOTO」

 五島市に生息する外来生物の実態や対策について考える学習会が17日、市内のホテルであった。島の動植物調査に取り組む五島自然環境ネットワークの上田浩一代表は、市内の池や洞窟で大繁殖するアメリカザリガニを例に、駆除の難しさを紹介。人が安易に外来生物を自然に放つことが原因と指摘し、「希少な在来種を捕食することなど、五島の自然にもたらす悪影響を知ることが、対策の第一歩だ」と呼び掛けた。

 学習会は「あなたの知らない五島の外来生物最前線」と題し、上田さんと、森林総合研究所九州支所(熊本県)主任研究員の安田雅俊さんが開催。市民約40人が参加した。
 アメリカザリガニは北米原産で、食用カエルの餌として国内に持ち込まれた。上田さんは3年ほど前から、県内でも希少な動植物が生息する三井楽町の「夫婦池」と富江町の溶岩トンネル「井坑」で、ザリガニ駆除を定期的に実施。捕獲数は年間で2万匹程度に上るが、繁殖力が強く外敵も少ないことなどから、依然として数は減らないという。
 また市内では、環境省が指定する特定外来生物として、ツバキの実や樹液などを好んで食べる「クリハラリス(タイワンリス)」や多様な動物を捕食する「ウシガエル」、繁殖力が強く在来植物を駆逐する「オオキンケイギク」なども確認したことを紹介した。
 クリハラリス対策に詳しい安田さんは、島全体に生息域が拡大してしまった壱岐島や、特産のつばき油生産に深刻な被害が出ている東京都伊豆大島の事例を紹介。生息域が拡大しつつある福江島でも、10年後には全域に広がる恐れがあるとして、「五島のツバキの食害を防ぐためにも、県や市が『公共事業』として計画的に駆除に取り組み、市民も自分の問題として協力していくことが必要」と述べた。

© 株式会社長崎新聞社