【MLB】イチロー氏が“偉大な野球選手”100位に選出 米メディア特集「彼以上が99人…」

マリナーズの会長付き特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏【写真:田口有史】

四球と長打が少ないことで過小評価も「スリリングで通常と異なる素晴らしい人間」

 今年3月に現役引退し、現在はマリナーズの会長付き特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏が、米メディア「ジ・アスレチック」が選ぶ“偉大な野球選手”の100位に選出された。「彼のような人はこれまで誰も存在しなかった。そしてそれは、おそらくこれからも変わることはないだろう」と選出理由を紹介している。

 メジャー通算3089安打、日米通算4367安打など数々の大記録を残してきたイチロー氏だが、データ全盛の時代において、四球と長打が少ないことで過小評価を受けてきた。OPS+107、60に満たないWAR、長打率.402などの記録は他の大選手たちと比べると特別ではないことから、今回のような「偉大なプレーヤーリスト」に入ったことはなかったとしている。

 しかし記事では「どのような数字を用いても、彼のようなスリリングで、通常と異なる、素晴らしいイチロー・スズキのような人間を説明することは出来ない」と言及。「打席前に毎回行うヨガのようなウォームアップ。打席での足の動かし方。幾何学上の美技のような彼のベースの周り方。ボールだけでなく、まるで自分自身を投げているかのような外野からのスロー」と、日米の多くのファンを沸かせてきた美しいプレーの数々を振り返っている。

 そんなイチロー氏だが、海を渡った直後には懐疑的な目を向けられていたという。マリナーズ移籍前年の2000年にはオリックスで打率.387と驚異的な成績を残し、「野球の大好きな彼の祖国が愛してやまない完璧なプレーヤーだった」が、日本人野手では初のメジャー挑戦はすべてが未知数だった。

プレッシャーを跳ね返してタイトル独占「投手がどう投げようが関係なかった」

 2001年のスプリングトレーニングでは、スイングの回数を数えることだけを任命された記者もいるほどの注目度。記事では「野球の歴史でこれほどまでにメディアの関心を集めたものは、これまでにいなかった」と紹介している。投手では野茂英雄氏がすでに“パイオニア”として活躍していたが「打者は投手とは違う。隠れる場所はない。オフの日もない。毎日、戦いが待っている…」と多大なプレッシャーがかかったと指摘している。

 このような状況で、多くの人はメジャーに対応できるか疑問に思っており、「華奢」「彼は勝負にならない」「彼は時間が必要だよ。ここでのベースボールは全く別物だから」との意見がほとんどだったという。しかし、シーズンが始まるとヒットを量産。終わってみれば打率.350、242安打、56盗塁の大活躍で首位打者、盗塁王、新人王、MVPとタイトルを独占した。

 最終的にメジャー通算3089安打、日米通算4367安打など数々の大記録を残したイチロー氏。「投手がどう投げようが関係なかった。野手がどこに居ようとも関係なかった。彼には何も関係なかった。彼はオープンスペースに様々な方法で打ち、一塁へのラインを走り抜け、送球に勝った」と活躍を振り返り、ちょうど100位での選出に「彼よりも上かもしれないプレーヤーが99人もいるなんて」と思うことだろうとしている。

 MLBの長い歴史で堂々の100位に選出された理由は「どんな数字もこれ(イチロー氏の功績)を説明することは不可能である」こと。引退してもその功績はまだまだ色褪せないようだ。(Full-Count編集部)

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