ケプラー51にある太陽系外惑星は土星よりも密度が低く綿菓子のよう

太陽系で2番目に大きな惑星「土星」平均密度が水よりも低い(水の0.7倍程度)ことから、密度の低さをわかりやすく伝えるために「水に浮かんでしまう」と表現されることがあります。今回、土星よりもさらに低密度な太陽系外惑星に関する研究成果が発表されました。

■ハッブルの観測データなどから系外惑星の密度の低さを確認

Jessica Libby-Roberts氏(コロラド大学ボルダー校)らの研究チームが分析したのは、はくちょう座の方向およそ2600光年先にある5億歳ほどの若い恒星「ケプラー51」を周回する系外惑星「ケプラー51 b」「ケプラー51 d」です。ケプラー51の系外惑星は2012年に「ケプラー」宇宙望遠鏡によって発見されたもので、この2つと「ケプラー51 c」を合わせた3つの系外惑星が知られています。

Libby-Roberts氏らは、ケプラー51 bとケプラー51 dが主星(ケプラー51)の手前を横切るトランジット現象を起こす様子を、「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広角カメラ3(WFC3)」を使って観測。得られた観測データと過去の観測結果を組み合わせて、系外惑星の直径と質量、それに平均密度を求めました。

その結果、ケプラー51にある3つの系外惑星は海王星の約半分となる地球数個分の質量しか持たないにもかかわらず、直径は土星や木星くらいの大きさに達するほど膨らんでいることが確認されました。その密度は「水に浮く」土星よりもずっと低く、いずれも1立方cmあたり0.1g(1立方mあたり100kg)未満という低密度。NASAは発表のなかで密度の低さを「綿菓子のよう」「岩や水よりも発泡スチロールに近い」と表現しています。

■若い惑星が進化しつつある様子を観測している?

論文によると、ハッブルによってトランジットが観測されたケプラー51 bとケプラー51 dの密度は、それぞれ約0.064g/cmと約0.038g/cm。過去のデータを再解析したケプラー51 cは約0.034g/cmとされています。

これほどまでに低密度である理由は完全には明らかになっていませんが、ヒントはその年齢にありそうです。これらの系外惑星は、もともと主星からある程度離れた「雪線」(スノーラインとも。水分子が氷になり始める領域)より遠くで形成されたものの、その後に現在観測されているような主星に近い軌道まで移動してきたとみられています。

太陽系の惑星と比べて、主星のケプラー51とその系外惑星はみな若い天体です。そのため、現在地球から観測されているような「大気が膨らみ平均密度が低くなっている系外惑星」の姿は過渡的なもので、やがては別の姿に変化していくだろうと考えられています。

実際に、ケプラー51 bとケプラー51 dは、どちらも急速に大気を放出しているようです。最も内側を公転するケプラー51 bの場合、失われる物質の量は毎秒数百億トンに達するとされています。10億年ほど経てばケプラー51 bのサイズは海王星程度にまで小さくなり、主星に近い軌道を周回する「ホット・ネプチューン」と呼ばれる系外惑星になる可能性が指摘されています。

Image Credit: NASA, ESA, and L. Hustak and J. Olmsted (STScI)
Source: NASA/ CU Boulder
文/松村武宏

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