【社説】102兆円政府予算案 健全化へ危機感足りぬ

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 膨らむ一方の社会保障関係費や防衛費を十分には抑えることができず、税収見込みを甘くして、つじつまを合わせた。そんな印象が否めない。

 政府がきのう閣議決定した2020年度当初予算案である。一般会計の総額は102兆6580億円と19年度当初を1兆円以上も上回り、8年続けて過去最大を更新した。

 高度成長期とは違い、あれもこれもは許されない財政状況になって久しいのに、歳出を絞り込むタガが緩んでいるようだ。国と地方の借金が合わせて1100兆円を超す現状への危機感が乏しいと言わざるを得ない。

 社会保障関係費の膨張は高齢化の影響が大きい。過去最高の35兆8608億円となり、歳出の3分の1を占める。22年から「団塊の世代」が後期高齢者に差し掛かり、医療・介護費は今後も増える。1人当たりの医療費は75歳を境に大きく増え、75歳未満の4倍以上だからだ。

 政府は今回、医療費のほぼ2割を占める医薬品の薬価を下げる一方で、医師らの人件費や技術料は引き上げる。医師会の抵抗が強いからだろうが、有力な支援組織ゆえに対応が甘くなったのではないか。疑問が残る。

 安倍政権の打ち出した、高等教育無償化、幼児教育・保育の無償化の費用も19年度より増やした。幼保無償化は今年秋に始まったが、制度設計が甘く、用意していた財源では足りなくなり増額する羽目になった。

 8年連続の増加で過去最高を更新した防衛費は5兆3133億円となった。軍備拡張を続ける中国や北朝鮮に対する備えは必要だとしても、「聖域」扱いは許されない。とりわけ米国の言いなりで高額な装備を買うだけでは歯止めが利かなくなる。

 東京五輪・パラリンピックの選手強化などには、過去最高の351億円を計上した。成功を目指して力を入れるのは理解できるが、「地方創生」をおざなりにしてもらっては困る。

 消費税増税の影響を減らすため、景気下支えには1兆7788億円を費やす。

 膨らむばかりの歳出に比べ、歳入は心もとない。税収は19年度当初より1兆180億円多い63兆5130億円と、過去最高を見込んでいる。19年度は法人税収の落ち込みが響き、2兆円を超す赤字国債を追加発行せざるを得なくなった。

 背景には、政府の甘い景気判断がある。20年度の国内総生産(GDP)成長率も実質1.4%程度としたが、民間エコノミストの予測の平均0.5%程度に比べ、楽観的過ぎる。厳しい目で現状を分析すべきである。

 借金に当たる国債の新規発行額は10年続けて減らした。しかし借り換え分の発行額が膨らみ、国債の発行総額は153兆円余と19年度当初を4兆円以上も上回った。いつになれば借金依存から脱却できるのか。

 財政の健全度を示す基礎的財政収支は9兆2047億円の赤字となる。悪化は3年ぶりで増税しても財政再建が進んでいないことが明らかになった。25年度の収支黒字化という政府目標の達成には程遠い。にもかかわらず安倍晋三首相は7月の参院選で、今後10年間は増税は不要と述べた。無責任に過ぎよう。

 年明けに開会する通常国会では、中長期的な視点を交え、踏み込んだ論議が求められる。