【MLB】前田健太の自主トレ潜入! 新たな取り組み、マエケン体操の奥にある真意に迫る

トレーニングをするドジャース・前田健太(右)と木村トレーナー

IWA ACADEMYの木村トレーナーが分析 前田の修正能力に驚き

 今季も先発、中継ぎでフル回転して2年ぶりの2桁勝利をマークしたドジャース・前田健太投手。今オフに四ツ谷の「IWA ACADEMY」で行っていた自主トレの様子をFull-Countライターで元ニッポン放送アナウンサーの新保友映が潜入&独占取材。今回のトレーニングでは以前から前田の体を見ている同アカデミーのチーフディレクター・木村匡宏トレーナーと今季の身体の使い方や、前田自身が感じている改善したい点など、振り返りを行った。その様子を詳報する。

 前田と木村トレーナーはキャンプ前から、投球動作についてや身体の使い方、前田独自のチェックポイントなどをお互いに話し合ってきた。特に、不調に苦しみ勝ち星から遠ざかっていた7月、前田はアメリカから木村トレーナーへ連絡をし、自身の投球動画を解析してもらった。「いい方向へ行き、シーズン終わりまでその感覚が保てた」と感謝した。

 木村トレーナーが説明する。「前田投手の場合、下半身の力を使う上で左脚の使い方が軸となるんですが、7月の投球を見てみると、右脚の方へと軸がズレていました。本人に確認すると確かに、気づかないうちに右脚ばかりを使うようになっていたとのことでした」

 そのズレを調整し、投球動作を整える方法を伝えると、次の試合からすぐ改善されたと振り返る。7月は未勝利だったが、8月以降、白星に直結。安心したのと同時に、前田の調整力に驚いたという。

「投球動作は、身体のつながりが大事です。しかし、ボールをリリースするときの力を最大限に発揮するための身体の使い方には、人それぞれ違いがあって、まずそのことを理解する必要があるんです」

 どんなに実力のあるアスリートでも、何日も同じ動作をしていると知らないうちにズレができて、だんだんそのズレがわからなくなってくる。外から見て指摘するのがトレーナーの役目で、修正はしておくべきことだと自負している。今回も、前田のパワーが最も発揮される身体の位置の確認や、自らその位置を調整できるようにするための動きを指南した。

 前田の場合、投球動作で肩甲骨と体幹のつながりを良い状態にするためには、肩を上から回すようにセットすると力のつながりが良くなり、パワーが発揮される。つまり、マエケン体操が非常に理にかなっていることを示している。また、セットポジションの時の良い構え方、グラブを握る際に力を入れる指の話から、バッティングの際のバットの握り方にまで話は及んだ。すべて連動している要素だ。
 
 さらに前田から、今季のフォーシームの伸び率が下がっているとチームからの指摘があったことを相談された。原因は「腕の位置が下がってきているからなのでは……」という、来季に向けて、改善したい部分についても話し合われた。

特殊な器具を使用してトレーニングを行う前田健太

前田は手応え「来季に向けて試してみたいことも広がった」

 前田によると、変化球の質は上がってきているが、フォーシームについては回転の軸がズレて、とらえられる数が増えているのではないかという見解があった。

「腕が下がる原因で考えられることは、長いシーズンを投げ続けることによって、ボールを投げる上でとても影響力のある肩甲骨周りの筋肉の機能が低下することによって起こること」と木村トレーナーは考案し、トレーニングは進められた。手のひらより少し大きく、素材はバスケットボールに似ていて滑らず指に良くかかるボールを使用。肩甲骨周りの筋肉を使いながら、頭の上からバウンドさせつつこのボールを投げることで、実際に球を投げる時に必要な「しなり」と「腕の高さ」を調整できるようになる。

 また、投手に必要なボールへの指のかかり、に直接、働きかけができるという。試した前田も「指へのかかりがとてもよくなりそうだし、このボールを使った調整はウォーミングアップと、シーズン中の投げ終わった後にもやりたい」と今後も取り入れていくという。前田はトレーニングの最後に公式球も投げ、改めて投球の感覚も取り戻した。

 前田も「自分の体を準備するためにこれまでやっていたことが正しかったことも確認できたし、来季に向けて試してみたいことも広がった」と手応えをつかんだ様子。最新の機械を使ったトレーニングにも励み、「自分の感覚に頼っていると、修正できていると思っていてもなかなか直せていないことがある。トレーナーとしっかりコミュニケーションをとりながら、また、新しい情報や機械も取り入れながらこのオフも地道に自分の体と向き合い、作っていきたい」。メジャーシーズン5年目に向けて、取り組み方や目標を新たにした。オフもどん欲に新しい自分と向き合う前田健太から目が離せない。(新保友映 / Tomoe Shimbo)

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